第33話スポーツ観戦ブエナ村のジョン
ブエナ村のジョン冒険者だ。
とはいってもベーゼヴィヒト公爵領に冒険者らしい仕事は少ない。
下水や街の清掃、公爵肝いりの道路工事が主な仕事だ。
そして今日はこの一週間、すこしづつ貯めたお金で贅沢をする日だ。
道路工事で同じグループの班長が言っていた。
「欲望の解放のさせ方が重要で中途半端に開放するのがダメらしい。妥協して選べば心の中にしこりが残りスカッとしない。やる時はきっちりや。それを次の節制の励みとする」のがいいらしい。
流石は、班長伊達に年は食ってない。
「さて今日はどこで遊ぼうか……」
「寄ってらっしゃい。見てらっしゃい。ベーゼヴィヒ公爵家が主導する新しい見世物スポーツだよ。見て楽しい。掛けて楽しい。酒や女と一緒に楽しんでいい最高の見世物だよ! 剣闘士が苦手な淑女も、劇が苦手な紳士も老若男女皆楽しめる娯楽だよ!」
と調子の良い売り文句を客引きの兄ちゃんが叫んでいる。
注視していることに気が付いた売り子の兄ちゃんは俺に近寄ってくると、
「興味があるならどうだい? 奢るよ」
と提案してくれるのでチケットを貰って会場内に入る。
このスポーツと言うモノは血生臭くなくていい。
見世物と言えば、剣闘士の試合や演劇が主だがこスポーツは動きの派手さは剣闘士と変わらず。かと言って演劇ほどの地味さもないのがいい。
ルールは少しばかり難解だが、声を大きくする魔法道具を用いた実況によって難しいルールを説明してしてくれる。
もちろん、それでもルールを理解出来ていない客は多いがそう言う奴は別の楽しみを見出している。
「姉ちゃん。ビールとツマミを一つずつくれ」
「1000ゴールドです」
と言ったように酒とツマミを楽しむ奴もいれば……
「アトラス! アビスに勝ってくれよ俺の一万ゴールドが賭かっているんだ!」
「一万ゴールドなんて大金よく集めたな」
「あいつ、マヅサガ商会のエールや飯を我慢して貯めたんだよ……」
「へぇ一声一番の大博打って事か……」
と賭博として楽しむものも居る。
そう言う俺は……豚肉の腸を茹で焼きにしたものと野菜が挟まれたパンを買い。
塩辛く温かいパンを冷えたビールで流し込む。
最高の贅沢だ。
マヅサガ商会は一体何人の魔法使いを雇っているのだろうか? と考えるが母体は大貴族ベーゼヴィヒト公爵家だ。お抱えの魔法使いに作らせているのだろう。
贅沢な事だ。
何を隠そう、俺はスポーツ観戦が趣味で全ての種目のルールを覚えている。
冒険者で土木労働者をしている俺だが、いつかスポーツ選手になる事が俺の夢であるため研究に余念はない。
試合はは前半戦。
二対一でアトラスが一点リード。
おっと、ここでリードを取られているアビスがミッドフィールダーを交代させた。
ああ、なるほど。
今までのミッドフィールダーは元フォワード選手でコンバート中のため腕が悪かったのだ。
しかし、失点を取り返し逆にリードを広げるために定番の選手を送り出すことにしたようだ。
交代したミッドフィールダーの蹴るパスは、先ほどまで同じポジションをしていた選手比べると大人と子供ほどに違う。
ボールを蹴り回転する音が近いとは言え観客席にまで届く程だ。
ミッドフィールダーの選手はアウトサイドでボールを外側へ押し出し、外側方向に進んでいくと見せかけ直後に同じ足のインサイドでボールを切り返し、内側に切り返すことで対峙する選手を抜きさるフェイント技『エラシコ』で相手チームを翻弄し点を捥ぎ取る。パワープレイを見せつける。
あっという間に同点に追いつくと、勢いを得たのか前半が終わるまで勇猛果敢にアビスが責め立ていた。
試合に熱中して気の抜け常温に戻ったビールを飲み干すと我慢できずにアビスの賭け札を購入した。
休憩時間を挟んで試合が再開される。
しかし、相手をしているアトラスも一方的にやられているわけではない。
ファールを恐れない大胆なスライディングでボールを奪いアビスを責め立てる。
いつもならいいプレイを拍手で湛えるのだが、この試合には金を掛けてしまった。
もう純粋に楽しむ事は出来ない。
勝つか、負けるかそれだけのギャンブルに成り下がる。
近くを通りかかった売り子からビールを買い足すと流行る気持ちを落ち着けるために酒をチビチビとやる。
最近はどちらが勝つか予想をする予想屋なんて出し物がスタジアムの一角にあるらしいが、一番簡単な二つに一つを当てたからと言ってどうなると言うんだ。
試合はアビスがハットトリックで勝利した。
そう言えば監督の人が見たと言っていた露出の激しい服装の女性がスポーツをしていたらしいがどうやたらそれを見れるのだろう?
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『あとがき』
今日でインターミッション回が終わり明日から本編『賊狩り編』の更新を再開しますので、お楽しみにお待ちください。
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新作のタイトル
【好きな幼馴染がバスケ部OBのチャラ男に寝取られたので、逃げ出したくて見返したくて猛勉強して難関私立に合格しました。「父さん再婚したいんだ」「別にいいけど……」継母の娘は超絶美少女でした】
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