土魔法使いは役に立ちたい
すっぱすぎない黒酢サワー
第1話
炎魔法使い :
火とか出せる。肉とか焼けて便利。一家に一人欲しい。だいたい熱血漢
水魔法使い :
水とか出せる。火を消せたり、何より飲み水に困らなくて便利。一家に一人欲しい。だいたい色っぽい女性
風魔法使い :
風とか出せる。物を空に浮かせたり出来る。一家に一人欲しい。だいたいイケメン
土魔法使い :
土とか出せる。基本的に地味。だいたいオッサン。今回は違うかもしれない
光魔法使い :
光が出せる。炎と少し被るけど便利。特に夜に一家に一人欲しい。だいたいイケメン。もしくはスレンダー美女
闇魔法使い :
闇が出せる。日中は太陽に負ける。最初は敵の事が多い。たまに寝返ったり戻ったり
魔法使い組合の慰安旅行。
夕食も終わり、皆が一息ついたころ、土魔法使いの少年が闇魔法使いに声を掛けた。
土 「ヤミ先輩。ボク、この仕事向いてないと思うんです」
闇 「いきなりどうした? ワシで良ければ話ぐらいは聞くぞ」
土 「いえ、ボクってなんでこんなに役に立たないんだろうって思って……」
闇 「どういう意味じゃ?」
土 「だって、炎魔法とか水魔法とか、すごいじゃないですか。戦闘も出来れば生活にも使える。それに比べてボクなんて、土の壁を出したり、落とし穴を作るぐらいしか出来ないんですよ」
闇 「土の壁。落とし穴。いいじゃないか。おぬしの魔法があるから、生き残れたこともあったろう」
土 「どうでしょうか。落とし穴はすぐ近くにしか作れないし。土壁は呼び出しても、回り込まれて攻撃を受ける事もあるんです。結局一時的に壁を作るだけですからね。風魔法の方が動きも早いし、攻撃魔法を相手に吹き返せるんですよ。そしてイケメン。それに比べたら土魔法なんて地味ですよ。地味魔法です」
闇 「……(これ突っ込みどころかの?)」
土 「ヤミ先輩。ボクどうしたらいいですかね?」
ふむ、と顎に手を当てて考えるそぶりをする闇魔法使い。
闇 「……闇魔法は知っているか?」
土 「え?」
闇 「闇魔法はの。暗闇の魔法だ。真っ暗になる。それだけじゃ、もちろん攻撃力なんてものは無い。闇をぶつけてもダメージは無いからの」
土 「はあ、でも相手の目が見えなくなるなら凄く便利じゃないですか? モンスターの目をつぶせるようなものですよね?」
闇 「日中は効果が無い。太陽が出ているからの。人間ひとりの魔法が、太陽に勝てる訳なかろう?」
土 「え……。で、でも夜なら効果があるんですよね?」
闇 「夜はもともと暗かろう? ちなみに、光魔法には勝てん。太陽が無いところにしか影は出来んのと同じじゃ」
土 「じゃ、じゃあどこで使うんですか?」
闇 「どこで使うと思う?」
土 「……(え、本当に使いどころ無くない?)」
困った様子で、土魔法使いが次の言葉を探す。
土 「え、ええと。すいません。とっさに出て来なくて」
闇 「なに。構わんさ。それにワシは土魔法を頼りにしておるぞ。土魔法にしか出来ん事があるしの」
土 「ほ、ほんとですか? 何ですかそれ」
闇 「ほほ。では今から参るとするか」
土 「え、どこへですか?」
風 「(シュタッ)ヤミ先輩。やはり今回は、土魔法が最も適任かと」
土 「フウ先輩!? どうしていきなり、上から降ってくるんですか! 忍者ですか!?」
闇 「ほっほっほ。やはり土か。山の中の温泉を選んで正解じゃったわい」
土 「温泉ですか? 確かにここは有名な温泉地ですが。これから入りに行くんですか?」
闇 「今、女湯に
土 「ヤミ先輩……?」
風 「ツチ。みなまで言わすな。お前にしか――頼めないんだ」
土 「なにかっこいい感じに言ってるですか!? それってのぞk……」
闇 「な~に。おぬしが見たくないのであれば、ワシの闇魔法をかけてやるから問題ないぞ」
土 「そういう使い方!? 役に立たないんじゃないんですか!」
風 「観念しろ」
土 「あんたイケメンなのに最悪だな!?」
闇 「ワシゃぁ闇じゃ。裏切ってなんぼじゃ」
土 「人としての信頼を裏切ってませんか!?」
闇 「今、お主が最も役に立てる時じゃ。元気を出せ」
土 「あ、もしかして。お二人ともボクを励ますためにそんな冗談を……。ありがとうございます!」
闇 「え?」
風 「え?」
土 「え?」
闇 「……」
風 「……」
土 「……」
向かい合う二人と一人。
土 「……
闇・風 「「ま、まて話せばわか――!」」
すとーんと、二人の魔法使いは穴の中へ落ちて行った。
魔法で穴にフタをしながら、土魔法使いは思った。
たとえ無能でも、せめて人に迷惑をかけるような生き方だけはしないと。
土 「あ、憲兵さーん!」
そして、感謝した。
初めて自分の魔法が人の役に立った気がすると。
土魔法使いは役に立ちたい すっぱすぎない黒酢サワー @kurozu_3
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