第42話 能力鑑定
オレたちは、一旦最初の
これからの方針を確認するためだ。
「パルには進むべき道がわかるっぽいね……」
「でも、その道が本当に出口っていう保証もないのよね……」
「あ、でも、もしかしたら散り散りになったみんなのところに向かってるのかも……」
「ケッ、魔物の巣に向かってるのかもしれねぇけどな」
「もしかしたら道がわかるだけで、闇雲に進んでるだけなのかもしれないし……」
オレ、リサ、ルゥ、オルクの四人は、ローパーのパルをぐるりと囲んで、現在作戦会議中。
明るいところに戻ってきたからなのか、パルの触手の光は収まっている。
そして、その触手には、しっかりとミニ大悪魔ことナメクジ目玉が握られている。
当面の問題は。
一、パルの行こうとしてる先がどこなのか問題
二、壁から沸いてくる魔物に対する防衛問題
三、長丁場になるなら食事、睡眠、トイレ等はどうするかの生活問題
四、ミニ大悪魔を成長させず、かといって殺してしまってもいけないっぽい問題
の四つだ。
「でも、結局パルに任せる以外に、現状から脱する方法がないのも事実よね」
「で、仮にパル任せで進むとしてもだ。あの暗闇の中で、さっきみたいな
「そんなに? 蟻と私達の力の差ってどれくらいあるの? 人間になったばかりで、あんまり自分の体のことがわからないのよね。魔力が減って、体も脆くなったことはなんとなくわかるんだけど……」
「ああ、一度みんな鑑定していおいたほうがいいか。せっかくスキルも進化したことだしね」
ってことで、順に
「まず、リサね」
名前:ラ・リサリサ・ホーホウ・バルトハルト・ヴィ・ルージュリア・レッドグラム・ローデンベルグ
種族:人間
職業:無職
レベル:12
体力:30
魔力:10
職業特性:なし
スキル:なし
「む、無職……。それに、スキルなし……。でも、昨日まで全く覚えてくれてなかった私のフルネームを、フィードが間違えずに言えたってことは、本当に見えてるのね……。ちなみに、さっきの蟻はどれくらいだったの?」
「さっきの蟻は……」
名前:糧を収拾せし者
種族:デビル・アント
レベル:6
体力:666
魔力:66
スキル:【
「だよ」
「魔力で六倍、体力で二十倍差……。これが人間と魔物の差なのね……。前の私だったら、こんなのワンパンだったでしょうに……」
「人間になったこと、後悔してる?」
「そ、そんなわけないでしょ! 私は私の決断を後悔なんてしないわ! ただ……みんなの足手まといになるのが、その……申し訳ないのよ…………」
恥ずかしそうに尻すぼみ気味にリサが漏らす。
パキッ──。
オレは蟻の前脚を魔鋭刀で根元から切り落とすと。
ガリガリ……ザッザッザッ──。
持ち手となる部分を削っていく。
「ちょ、フィード……?」
蟻は三匹。
前脚は六本。
それから作った簡易ノコギリ槍六本。
それをリサ、ルゥ、オルクに一本ずつ。
触手がいっぱいあるパルには三本渡す。
「襲ってくるのがさっきの蟻だけだとしたら、同じ硬度のこれで攻撃自体は
──人間の中では。
そう、人間で魔力10は多い方だ。
ただし、ここは魔界。
しかも、大悪魔の生み出したダンジョンの中。
いくら人間の範疇で高い能力を持っていたとしても、ここではあまりにも無力だ。
オレが守ってやらないと。
かつて、オレを守ってくれていたモモのように。
リサは、手渡された前脚槍を不安そうに見つめている。
守ろう。
彼女のおかげで、オレは檻から脱出できたんだ。
次はオレが守って、彼女をこの肉の檻から出してあげよう。
そう決意して、鑑定へと戻る。
「次にルゥは……」
名前:ルゥ
種族:人間
職業:無職
レベル:8
体力:20
魔力:84
職業特性:なし
スキル:なし
「だね」
「はぁ……やっぱり無職……。あ、でも名前ルゥなんですね! それと魔力も高いです!」
たしかに元のゴンゴルじゃなくて、ルゥになっている。
ルゥと名付けたのはリサだ。
名前って、本人の認識によって変わるのかな?
なら、オレのアベル・フィード・オファリングってのは……。
「そうだね、人間でこの魔力の値の人は見たことないな。もしかしたら人類最強かもしれないぞ。きっとすごい職とスキルを授かるんじゃないかな?」
「えぇ……? 最強、ですか……」
「ふ、ふんっ! なによ! 体力は私のほうがスゴいんだからねっ!」
戸惑うルゥ。
そして、ルゥに対抗心を燃やすリサ。
「それに、人類最強はフィードでしょ、どう見ても! フィードの能力値はどうなのよっ!? さっさと教えなさい!」
「あ、ああ、オレ……? オレは……」
す、少なく伝えるべきだろうか……?
正直に言ったら、リサを傷つけちゃうんじゃ……。
……いや、リサを信じよう。
それに。
きっと、そういう気の遣われ方は嫌なはずだ、リサは。
名前:アベル・フィード・オファリング
種族:人間(?)
職業:鑑定士
レベル:108
体力:702
魔力:8161
職業特性:【超遅速レベルアップ】【倍算レベルアップ】【スキル進化】【スキル覚醒】
スキル:【
「だよ」
どうだろうか……リサの反応は……。
「な、な、なぁぁ……っ!? ん……こ、こほんっ……。ま……まぁまぁじゃないの、フィードにしては? なに? レベルが108ですって? レベルって大まかな強さの基準ってことかしら? なら、私がそのレベルになる時には、とっくにフィードのことなんか追い越してるわねっ! (小声)しょうがないから今はフィードに頼ってあげるけど……(大声)すぐに追い越すから覚悟しておきなさい!」
目からは動揺を感じさせるものの、持ち前の勝ち気な性格を発揮して明るく振る舞うリサ。
よかった……。
やっぱり、リサは強いや……。
先の見えないダンジョンの中。
そんな中を、このたった五人のチームで進み、脱出しなければならない。
正確な情報を共有することは、前提条件として必須だ。
もう、騙したり、裏をかいたりする必要はない。
お互いを信じて、力を合わせて
「あの……名前なんですが、アベル・フィード・オファリング……?」
そう、この「フィード・オファリング」とは、ルゥが名付けてくれた名前だ。
最初は涙を流すほど嫌いだったこの名前にも、いつからかオレは愛着を抱くようになっていた。
その名前が、元の名前と一緒になって表示されている。
「ああ、アベルってのは、オレの元の名前。ただの狩人の息子だから名字はないよ。で、何故か知らないけど、くっついちゃってるね……名前」
「その名前とかってどういう感じで見えてるんですか?」
「通常は鑑定した相手の頭の上に見えるよ。自分を見る時は目の前に。物体を見る時は、その上とか真ん中とかに見えるね」
「見えるって文字が見えるんですか?」
「ああ、こう……金ピカの枠に囲まれた一覧みたいなのが見える。前までは、文字だけがバラバラに表示されてたんだけど、職業特性? で、スキルが進化して見えるようになったみたい」
「へぇ~、すごいですね!」
にっこりと全肯定してくれるルゥ。
あぁ……なんか表示されてる内容が混乱するようなものばっかりだから戸惑ってたんだけど、こうやって笑顔で受け止めてもらえると安心するな……。
うん、あんまり考えすぎてても仕方がない。
まずは、ここから脱出することだけを考えよう。
オレの鑑定結果へのツッコミは、その後からで十分だ。
「おう!? オレ様はどうなんだよ!? きっとすごい数値なんだろ!」
そう言って胸を張るオークのオルク。
「そうだね、オルクは……」
名前:オルク
種族:オーク
レベル:7
体力:2394
魔力:1021
スキル:なし
「だよ」
「そんなもんなのか……」
あきらかに落胆した表情を見せるオルク。
オレがスキルを奪う前は、もっと魔力が多かった。
けど、それは伝えない。
正確な情報は共有すべきだが、だからといって言わずにいいことまで言って不和を招く必要はない。
「でも、体力がすごく高い! オレは、まだ体力が見えるようになったばかりだけど、魔物全体の中で見てもかなり高い方じゃないかなぁ!」
多分、ね。
「お、そ……そうか? ま、まぁ、オレ様だからな……。おぅ、ってことで……そこの女二人、それからパルは、オレ様が守ってやるからよ。感謝しな」
ブー。
と、ほっぺたを膨らませてみせるリサ。
元バンパイアとしては、オークなんかに守ってもらうのは不服なのだろう。
「そういえば、パルさんは、どれくらいなんですか?」
「パル? パルは──」
名前:プリンセス・パル
種族:ローパー
レベル:22
体力:5263
魔力:3070
スキル:なし
はえ?
なに?
プリンセス……?
「えっと、なんか……プリンセス・パル……って名前らしい……」
「プ、プリンセス……?」
「え、ってことは、まさか──」
「パルって、ローパーのお姫様だったの!!?」
パルは楽しそうに、蟻の前脚を持った触手をふるふると上下させていた。
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