第16話
カフェで少しだけ休憩した俺たちは、ショッピングモール内にある洋服店を巡っていた。休日ということもあり家族連れやカップルで賑わっており、若干の肩身の狭さがあった。
「ねえ、私たちって他人から見ればカップルに見えるのかしら」
「…どうした、急に」
「どうしたも、これだけカップルが多いと単純に私たちもその括りになるのかと思っただけよ。何?意識しちゃった?」
「別に意識してねえよ。お前が意識してるんじゃないのか?…てか着くぞ、服買うんだろ服」
「はいはい。そう言うことにしておいてあげるわ」
引き分け《ドロー》だな。何が引き分け《ドロー》なのかはわからないが。それにしても今日の薊は機嫌がいいのかいつもより鬱陶しいな。
モール内のファストファッションブランドの店舗内に入ると、薊を引き連れウィメンズコーナーに向かった。
「よし、選べ」
「…何?丸投げ?貴方が選ぶのよ」
「俺も選ぶからお前も少しは選べよ。あと、丸投げはお前だろ」
なんでこんなに自分を棚に上げられるのだろうか。
「…わかったわよ。センスはないから期待しないことね」
自信満々に言う薊と店内を見てまわり、俺は似合いそうな服を片っ端から試着させた。
こいつが選んだ服は、絶妙なこれじゃない感があるものばかりだったので、マジでなんの戦力にもならなかった。お母さんが買ってきた謎の服はこういう奴が成長したら子供に買い与えるんだろうなと少しだけ気付いてしまったくらいだ。…まあ俺はお母さんいないんだけどな。
「よし、次はこれとこれだ」
「…まだ買うの?…も、もういいんじゃないかしら?」
「5セットくらいはいるだろ。もう疲れたのか?」
「…正直少し疲れてしまったわ。あと2セット分はまた今度付き合って頂戴」
「今日はこれくらいで勘弁してやるよ」
疲労困憊の薊からのギブアップ宣言もあったため、今日は選んだ3セット分の服のみを会計することにした。流石はファストファッションブランドだ思ったよりも安く上がったな。
商品の紙袋を持つとモールを後にした。
「木葉くん。今日はありがとう。楽しかったわ」
「まあ、気にすんな。俺も勉強見て貰ってるしな。今日はもう帰るか?俺は秘密基地まで戻るけど」
「まだ時間もあるし、勉強を見てあげるわ」
「マジか、ありがたいな」
「秘密基地に戻るなら、向こうでご飯でも行かない?少しお腹が空いたわ」
「そうだな。あの辺ラーメンしかないけど、それでもいいか?」
「たまにはいいわね。行きましょうか」
俺達はモール前に停まっているタクシーに乗り込み、秘密基地へと向かった。
俺の秘密基地で美少女が襲われているんだが だから。 @sojadoja
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