彼女の性質
みちづきシモン
こんなにも愛してる
「ハァハァ……、待ってよ……!」
どうしてどうしてどうして!
私はこんなにも武司のこと愛しているのに!
私は、逃げる武司を追いかけようとして止めた。追いつけるわけもない。
急に切り出されたさよなら。連絡手段も全て切られた。お別れは辛い。いつもそう、私と付き合ってくれた人は、私が愛すと逃げていく。
「大丈夫?」
ふと気づくと俯いた私に声をかける人がいた。
「凄い汗だよ? お水飲む?」
童顔の男の子とふと目が合う。
「あ、ありがとう……」
息を整えてベンチに座る。私は男の子の前で号泣した。
理由を聞いた彼は、同情してくれた。
「僕なら君みたいな子、絶対手放さないのに」
その声が頭に響く。ダメよ、私は武司を……。
「ごめん、変なこと言ったね」
ああ、ダメ、私もう虜になってる。
「あの……、名前聞いてもいい?」
名前を聞き、これからも話を聞いてもらうのに連絡先を交換した。彼と別れた後、こっそり後をつけて家の場所も確認。大丈夫、武司の時みたいに失敗しない。
「悠君……、好き」
誰にも渡さない。私は悠君のもの。悠君の為ならなんだってする。とりあえず「今日はありがとう」のメッセージを送る。既読がつかない。待ってみる。
中々つかないのでもう一度メッセージを送る。「忙しかったかな?」、これでもつかない。どうしたんだろう? 私は何度かメッセージを送る。
やっと既読がついて返信が返ってきた。
「ごめん、眠ってた」
悠君も疲れていたのかもしれない。私はすぐさま返信を送る。そのままやり取りを繰り返し、電話に切り替え、話を聞いてもらう。
私は武司に尽くした。愛した。なのに、捨てられた。それを話すと彼はこう言ってくれた。
「酷いね、可哀想だ」
私は悠君の優しさに触れ泣いた。
「明日もう一度会って話がしたいよ」
彼がこう言ってくれた。
そして次の日会った時、ランチを食べながら、彼が言った。
「僕達相性いいと思うんだ。恋人になってくれない?」
私は首を縦に振った。武司なんてもういい。
悠君が好き。悠君の全てを愛す。悠君と同じ墓に入るまで、一生そばに居る。
私達は抱き合ってキスをした。
それから僕が彼女の性質を見抜くまでには多少の時間がかかった。僕は最初気づかなかった。眠ってる間送られてきた大量のメッセージも、傷心からのものだと思っていた。ずっと僕から「目を離さない」彼女のことを愛せる自信がなくなっていくのだ。
彼女の性質 みちづきシモン @simon1987
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