幸捨

@kanon107

出逢い

 雨宮神楽が目を覚ますと三田洋介は興奮気味に言った。

「神楽、今日は雨が降ってるよ。思い出すな。みさこと俺が出会った日。」

三田は雨が降るたびにこの話をする。私はこの話をもう百回以上は聞いているだろう。

高校生だった頃の三田と神楽の母みさこの話。みさこと出会ってから三田の人生はみさこ一色に染まってしまった。みさこが東京の大学に進学するといえば三田も一緒に進学した。しかし三田の片思いだった。みさこは就職した先で出会った二つ上の上司と出来ちゃった結婚をした。そして生まれたのが神楽だ。みさこは警察に三田のことを相談していた。警察は三田に接近禁止令を出した。ちょうど神楽が小学生になった頃のことだった。それでも諦めがつかない三田は神楽の誘拐を実行した。みさこから大切なものを奪おうと思ったのかそれとも神楽をみさこの身代わりにして自分の思い通りにしたかったのか。

 その日も朝から薄暗く曇っていた。友達と別れたあと神楽は一人で下校していた。遠くの方では雷の音が鳴り始めていて神楽は急ぎ足で家をめざした。しかし、小石につまづいてしまった。立ちあがろうとするとふらついて立つことができなかった。足を見ると出血していた。そこに三田がやってきて神楽に話しかけた。

「僕ねお母さんと知り合いだから神楽ちゃんのこと知ってるよ。足痛そうだから家まで送ってあげるよ。」

歩けないほど足が痛かった神楽は仕方なく三田の車に乗った。気づいたら三田の自宅がある大阪までやってきていた。神楽は大阪で生きることになった。

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