読んでいる最中に間違いなく入賞だと確信できる並々ならぬセンス、脱帽です。
タイトルからも分かるように童話の「シンデレラ」をオマージュとした物語になっているのですが、さりげなく鍵にガラスの靴のストラップをつけたり、その鍵を落とすことで話が進展したりと、設定の再現度が非常に高いんですよね。
こういった話は大抵、表面的な要素を真似るばかりで原点とは似ても似つかぬ話になってしまうのがアリガチなんですけれど、そういった作品とは対照的な完成度です。
設定の細かい所まで深く練られているのを感じるだけでなく、文章もコミカルでさり気無いジョークを随所に挟んできたり、思わずニンマリしてしまうような青春の葛藤がてんこ盛りだったりで、最初から最後まで飽きることなく楽しめました。
そしてシンプルに、描写が上手い。情景が目に浮かぶような写実的かつエモい描写は「これこそ学園青春小説専用」と言わんばかりに研ぎ澄まされた作者さまの強力な武器です。
思わず応援したくなる健気な性格と意外性のあるモモ君のコンビ。
これからも先が楽しみでもっと続きが読みたくなる名作だと感じました。
文句なしに入賞だと思います。