第31話 海龍
教会の
軽バンでホットドッグを注文するより、安くて腹にたまる。その店の中にはメニューは貼ってない。注文取りに、小僧がやってきては、あの人と同じ物とか言って注文する。それで十分だ。
大抵は、新鮮な魚介類を焼いて、醤油みたいな塩っ辛い調味料が掛かっているので、それに白飯ではなく、キビや粟のような雑穀米が皿に大盛りでついてくる。食べ慣れれば、これはこれで有りだと思えてくる。
腹ごしらえが済めば、あとは薪割りに精を出す。予定通り進めば、今日で薪割りは終了する。さあ、午前の仕事を始めようかと気合いを入れたとき、アレッシアが、裏庭に駆け込んできた。
「どうしたんですか」
「こんなことをお願いして良いのか」
本音としては、聞きたくないが、それは薄情というものだろう。
「なんですか」
「海龍です」
「海龍って」
「海の龍です」
なるほど、俺の予想通りの答えだが、それ以上のことはわからん。
「それで、それが何か、この町を襲うのですか」
残念ながら、龍など退治できるはずもない。ついこないだって、泥棒の灰狐にコテンパンにやられたばっかりだ。
「多分、町は大丈夫です。陸地の町を襲ったという記録はないようなんです。ですが、海の上の船は大変危険です。軍艦でも一瞬で沈められてしまうらしいです」
まだ、話は見えない。
「オットーリオさんの船がまだ港に帰って来ていないようで。漁師仲間が心配しているのです。出来れば、ホイットさんにお願いして、オットーリオさんを探してもらえないでしょうか」
「残念ながら、ホイットは別件でいま外出しておりまして」
「そうなんですね」
もしこの場にいたとしても海の上をホイットは捜索できるのか? たぶん無理だろう。
「すみませんでした、やはりギルドに相談してみます」
アレッシアは、来たときと同じ速度で、去っていった。俺は、軽バンの運転席に座ってナビの地図を見た。
「ロラさん、海の上の地図はどうすんの」
「もちろん作っぺ」
「どうやって」
「海の上でも下でも走れっぺ。海の上を走るなら、ギアはD。海の中を海底の地形にそって進みたいなら、Lにギアを入れろ」
「ほんと」
「ウソついてどうすんだ、馬鹿野郎」
それならば、俺でもオットーリオの捜索は可能かもしれない。タブレットをレンタルして地図を確認する。神域獲得の戦略を考える。神域を作れば、俺に敵意を持つ者をある程度遠ざけることができるはずだ。
俺は、薪割りを中断して、漁師仲間からオットーリオに関する情報を集めた。そして、ひと目につかない、それでいて連鎖効果が発揮できる海岸から海に乗り出した。
海の上は、快適だった。波の高さは、1から2メートルほどで、ほぼ無風。天気は快晴。
フロントガラスには、水しぶきはかからないが、サイドガラスには、波しぶきがかかる。それは、雨の日、対向車線のトラックが水たまりの水をはね上げる様を思い起こさせた。降りて、この軽バンがどうなっているのか調べて見たいところだが、きっとろくなことにならないだろう。
今のところ、大型の生き物の気配はない。アクセルはべた踏みだ。誰に気兼ねする必要もない。漁師の話では、オットーリオ以外の漁師は浜に引き上げているということで、漁船とぶつかる可能性も極めて低い。
末社の札は、海の上に落とすだけで良いのでいちいち埋める必要がなくて、さらに楽ちんだ。海龍の目撃情報をたよりにその海域が中社の支配領域になるように末社を配置していく。
昼過ぎには、7つの末社がつながった。ただし、オットーリオの船は影も形も見当たらなかった。もしも、海龍に襲われたのなら、船の破片が浮かんでいてもよさそうだが、そんな物も浮かんでいない。
さらに神域を拡大していく。目の前に、小島が見えてきた。無人島なのか、それとも船を着ける港があるのかは、まだ判別できない。連鎖効果を狙うなら、小島近辺は通らず、ここから進路を変える必要がある。
さて、どうしたものか、一瞬考え、小島に向かうことにした。小島まで行って様子を見て、ここに戻ってきても一時間ぐらいのロスだし、それから再び連鎖効果を狙い中社を設置しても、日が沈むまでには陸地に上がれると判断したからだ。
小島に近づくと、小島の陰から、小舟が現れた。
オットーリオだ。竿を振っている。良かった。無事だったようだ。俺も、海水の飛沫を浴びながら、運転席の窓を下ろして大きく手を振った。
****
ここまでで新しく覚えた技。
回し蹴り
蹴り技の一つ。
モーションが大きく、
技の出は遅いが威力は大きい。
外部破壊
かかと落とし
蹴り技の一つ。
モーションが大きく、
技の出は遅いが威力は大きい。
気防御貫通。外部破壊
技後のスキが大きい。
膝蹴り
蹴り技の一つ。接近技。
モーションが小さい。
威力は大きい。
気防御をある程度貫通。
内外破壊
外門
激突技の一つ。接近技。
肘を突き出し、体当たりをする。
気防御貫通。内外破壊
大ダメージを与える。
技後のスキがとても大きい。
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