第59話 勘が鋭すぎるのはもはや怖い

「「え…?」」


図星を突かれ、香奈さんと2人して固まる。


「その反応…やっぱり…」


「いや! 香奈さんとは!」


何も無い、と言いたかったが、香奈さんが突然立ち上がり、


「お母さん、すみません!」


心からの謝罪を示す90度の深いお辞儀をしていた。


「か、香奈ちゃん? どうしたの?」


「勉くん…いいですよね?」


「まぁ、もう隠せなさそうですし…」


「えっ、てことはやっぱり…」


「私は…勉くんと…お付き合いさせていただいています」


香奈さんの告白を聞いた、母さんはスッと立ち上がり、


「………勉、ちょっとお母さんの部屋に来なさい」


「え? なんで?」


「いいから、来なさい」


香奈さんを1人食卓に残して、母さんの部屋に入る。


「やっぱり…」


「やっぱり?」


「やっぱり彼女だったじゃないのよー! もう、なんで隠そうとしてたのよー!」


「いや、恥ずかしいし…どうせ、こうやって言われるの分かってたから…」


思っていた通り、僕は母さんに質問攻めに合い、解放されたのは10分後だった。




「ごめんね〜、香奈ちゃん。先食べてても良かったのに〜」


「いえ、そういうわけには…」


「もう、本当にいい子なんだから! 勉も見習ったらどうなの?」


質問攻めから解放され、食卓に戻ってこれたので、ようやくおせちを食べ始めることが出来た。


「っ! 美味しいですね! この伊達巻き」


「あっ、それh」


「それはお父さんが作ったのよね〜、今はいないけど、良かったわね〜お父さん」


「このこんにゃくも美味しいです!」


「そのこんにゃくはたd」


「知ってる? 香奈ちゃん、そのこんにゃくは手綱こんにゃくって言って、結び目があるから、夫婦円満や良縁を表してるのよ」


おせちを食べ始めて少し経ったのだが、僕が香奈さんと話そうとすると必ずと言っていいほど、母さんが横から話に入ってくる。

邪魔してるつもりは無いんだろうが、少しモヤっとする。

香奈さんは僕と付き合っているのに。

これが嫉妬なのだろうか。

男が嫉妬するのは気持ち悪いと自分で分かっていても、どうしても自分の心からモヤが晴れることはなかった。


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コンビニで傘を間違えた マキマキ @makimaki0318

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