第10話 エピローグ
「そう言えば、ヒカルは俺のことを好きなんだろ?なんで少女性愛者になったんだ?普通男児の方を対象にするんじゃないのか」
俺はそんな風に聞いてみた。
「そんな男児みたいなヤンチャなクソガキ見てたって楽しくねぇよ。辰馬みたいな容貌のモデルなんて居ないからな、それ考えたら女児の方が良い」
なんだその理屈は。筋が通っているようで通っていない。
「んんん?なら、もしかして麻冬たんを推しているのは、俺に似ているから、って事?」
色々こんがらがって来たので、ヒカルに確認するために聞いてみた。
「そう。前から似ているなぁ、と思っていたけどコス着てもらったら余計際立った。あれでメイクもしてもらったら余計に麻冬たんにそっくりになっていたのに」
怖いこと言うな、メイクなんてしないぞ。
「俺を麻冬たんに寄らせてどうするんだよ、逆だろ」
「麻冬たんはすっぴんになったり、ショートにしないから……」
この辺り、ヒカルの嗜好にブレが見られるな。若しかしたら麻冬たんのような少女?おねぇさん?が現れたら、そっちに目が行くのかもしれない。そうなれば、撫子さんも安堵するんだろうけど。
「大学に麻冬たんみたいな女性居ないですか」
俺は撫子さんに聞いてみた。
「麻冬たんねぇ……。ゴスロリ着て学校に来ている子はいるけど、正直どれもおすすめではないかなぁ。えらく個性的な子ばっかりでヒカルの相手にはちょっと、って思っちゃうわね」
撫子さんの回答は的を射ているようで外している。ヒカルが好きなのは『ロリータファッションを身につけている女性』ではなく、あくまで俺の様な容貌の女性で、それに1番近いのが麻冬たんだった、と言う話なのだから。
ヒカルには自力で麻冬たんみたいな子を見つけるか、俺のような容貌の子を見つけて貰わないと、また困ることが起こるかもしれないな。
「俺、もうコスは着ないし、メイクもしないからな」
と宣言すると、光は少し淋しそうな、残念そうな表情を浮かべた。
「で、どう?ヒカルと話してちょっとはスッキリした?」
撫子さんがそう訊いてきたけど、俺は疑問点は解決したけれども、気持ちの面ではちっとも良くはなってないから、撫子さんには首を振った。
「今直ぐには、ちょっと……12年はかかるかもしれない」
この嫌な感情を解消されるのは、数年かかるんだろうな、という予感めいたものがあった。
「時間かかるんだね」
「うん」
そんな話をしている間、ヒカルは何かを考えているのか、目で問いたげそうで、しかし口からは言葉が出ない、そんな表情をしていた。
ヒカルの物問いたげなそぶりに、
「ヒカル」
俺は優しげに声を掛けた。
これらの一騒動が終わると、撫子さんは大学に戻って行った。丁度、大学のはじまる頃だから、と言っていたけど数日休ませてしまったかもしれない。
撫子さんが大学へ戻った後、暫くしてから俺は、撫子さんに付き合ってくれ、と告白した。撫子さんは少し驚いた様だったが、了承してくれた。丁度彼氏と別れた直後だったらしい。良い時期に別れたものだ、彼氏は。などと喜んでいた。
「辰馬は大学どうするの?」
高校2年の冬休みに入った頃そんなことを聞かれた。その頃の俺は、死ぬほど進路に悩んでいた。だから誰かに相談できれば、と思っていたのだが、撫子さんに訊かれた時、相談相手の1人を忘れていたことに気がついた。
「撫子さん、俺どうしたら良いですかね?」
「そんなこと言われてもねぇ、因みに辰馬は文系?理系??」
「文系です。外国語学科希望」
「外国語か。なら何語か選択して、将来どうしたいか考えた方がいいわよ。大学はそれを考えて選択するべきね」
「それ、学校の先生にも言われます」
「決めているの?」
「漠然となら。翻訳家か通訳になりたいな、なんて」
「それならうちの大学に外国語文学部あるから、受けてみたら良いんじゃないかしら。うちの学校、授業のレベルは結構高いわよ。その代わり外国語学科は課題が相当ハードだって話だけど」
最後に脅しのような撫子さんの言葉に、俺は身がすくむ思いをしたけれども、同じ大学に通うのも良いかもしれないな、などと妄想をしてしまった。
ヒカルとは仲直りした。ヒカル自身は俺に対する感情をぶち撒けたことで、気が晴れたらしい。
普段のガサツなヒカルが戻ってきた。
ただ、ヒカルの乱暴なタッチに先日聞いた俺への想いというものが含まれているのではないかと考えると、少し引き気味になってしまう。
ヒカルに「進路はどうするのか」と聞いたら、
「そうだなぁ、まだ決めていない。辰馬と同じ大学を志望するのもいいな」
と答えてきた。うーん、これはストーキングされているのだろうか。少し返答に困ったのでやんわりとした笑顔とクスリ、という笑み声で返した。
学校でのヒカルと俺の関係を見た、女子生徒から「黄桜辰馬と誉ヒカルは付き合っているのか」疑惑が湧き、暫くの間一部の女子から熱い視線を浴びていたのだが、ヒカルと俺が否定することで、徐々に沈静化していった。
撫子さんと付き合い出してから、2回目の冬が来て、春に差し掛かる頃撫子さんの通う大学から合格通知が来た。
ヒカルには来なかった。
高校を卒業し、大学生活を送るためワンルームのアパートに引っ越すと、撫子さんが引っ越しを手伝ってくれた。そして
「私は、辰馬の恋人と、母親の二役
するのは無理だわ」
と言われ、別れを切り出された。俺は驚きと喪失感から返事をすることができず、其れを答えだと受け取った撫子さんは帰って行った。
ヒカルとは高校を卒業した後、メッセージを何回か交換した。俺もヒカルも以前の様に話をすることはなくなった。お互いの生活環境が違うためなのか、メッセンジャーというソフトを一つ挟む会話のせいだろうか。少しづつ話すことがなくなり、やがて音信不通になった。
その後、ヒカルと会うことは無かった。
俺の親友はガチムチ兄貴系ロリペド野郎 かほん @ino_ponta
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