蠢く組織の闇の胎動……をクラッシュさせる篇

第40話 驚天=復帰

「それで、何故アラタさんが私達のもとに来たのでしょうか?」

「あぁ、その前に……クス、敬語はやめて。ウチとクスの仲でしょ?」


 微笑みを浮かばせながらアラタさんが言ってくるけど……そこはかとなく冷や汗が出てくるんですが?

 それに俺とアラタさんってまだ片手で数えられるぐらいしか会ったことないよな? 俺ちゃん困惑。

 しかしながらアラタさんが砕けた口調を望むなら仕方がないか……逆らったら後が怖いとかじゃないからな!


「分かりま……分かった。これでいい?」

「以後そうすることね」

「ねぇあれって言わされてるパターン?」

「覚サン、言わぬが花っすよ」

「来栖音さん……」

「圧に負けたわねクスネ」


 そんなに好き放題言わなくてもよくない? それ以上言葉のナイフで突き刺してくるなら恥も外聞もなく泣き叫ぶぞ?


「……そろそろ本題に戻ろうよアラタさん」

「拗ねちゃってるクスも可愛いのね」

「アラタさん!」

「さて、と。クスを揶揄うのはこれぐらいにして……ウチが此処に来た目的はクスにも心当たりがあるんじゃない?」

「…………」


 考える。アラタさんの纏う雰囲気が変わってからどうにも俺の中で焦燥感がつのり始めている。良くない流れだ。嵐の前の静けさってやつか?

 しかし、心当たりときたか。問題行動をつい先日引き起こした身としてはそればっかりが浮かんでしまうがこの処罰はもう済んでいる。

 なので別の事柄となると何もピンとこない。もしやまだ追加で罰が――、


「八岐大蛇」

「ッ!? その単語をどこでッ!」


 それオロチは一族でも限られた者しか知らないのに!


「ふーん……知ってた上でアレを行使してたのね」

「答えて! どうしてアラタさんが知ってるの!?」

「今はそんなこと関係ないから。でもそうね……ウチに一撃でも当てれたら教えてあげる」

「……随分と私達を甘く見てくれますね」

「あら? これでもかなり過大評価した方よ?」


 つまり俺たちでは手も足も出ない、と?

 そうかそうか……流石にアラタさん、舐めるなよ? 俺は無言で【武装】を構える。そこまで余裕があるならその余裕を無くさせてやるよ。


「くすちゃん?」

るよ」

「ふーん……ならかかってきなさい。その戦意、ウチがズタズタにしてあげる」

「来栖音さん! 無茶です!?」


 何故アラタさんがオロチを知ってるのか。その疑問を解明するため俺は鈴の制止を振り切りアラタさんへと駆けた。


「直線からの斬り上げ……つくづくあの男に染まっちゃって可哀想ね」

「お父様は、関係ないと思います!」

「関係あるわ。大アリよ? あの男と同じ業で、それもウチに挑むなんて愚の骨頂」

「……うるさいです」


 カラカラと。いっそ腹立たしいくらいに笑い続けるアラタさんに鬱憤を晴らすように二対の鎖鎌をアラタさんへ斬りつける。

 アラタさんに驚きはなく、その目には落胆と幾ばくかの興味の色が映る。


「小学生にしてはパワーあるわね。……でも力だけじゃこれは捌けないわよ?」

「なッ!? ぐっ!」


 ノーモーションから放たれた鎌の斬撃を辛うじて防げたのは殆ど勘だった。そんなのアリかよ!?


「ウチの能力ヒサから聞いてないの? もしや……聞いた上で突っ込んで来てたの? それはそれでおめでたい思考をしてるわね」

「ッ!? ……鎌の数は、私の方が多い。ならば手数で押し返す!」


 更にスピードを上昇させる。もっとだ……もっと疾くッ!

 だが無情にも俺とアラタさんの攻勢が覆ることなく、アラタさんの鎌一つで俺が圧倒されてしまっていた。……いや、違う。鎌一つ、と言えることすら烏滸がましい。


 だってアラタさん自身は何もしていないのだから。

 ずっと今まで頑張って鍛錬してきたのに。


 嗚呼、俺はまだまだ遠かったのか。


「どう、してッ!? 私はこんなに頑張ってるの、に……ゴハッ!」

「…………はぁ、興醒めだわ。クスのが見れると思って戦ったけど、期待し過ぎたかしら?」

「勝手、に……期待、し、て。かっ、てに、失望……しない、で」

「それは仕方ないじゃない。クスは今まで運が良かっただけよ? 井の中の蛙大海を知らず、素晴らしい言葉ね。クスにピッタリなんだから」


 そんな、こと。なら……は、は弱い?

 弱ければ皆を、さとちゃんやヒカリとエイ、そして鈴を、助けられない?


「くすちゃん今助け──」

「あら、誰の許可でウチとクスの触れ合いを邪魔する権利があるのよ?」

「アラタさん、でよろしいですか? これ以上は来栖音さんが危険です。直ちに終了を」

「え、嫌よ?」

「なっ!?」


 さとちゃん達がアラタさんと何か話しているが俺にはそんな事、関係無かった。


 やっぱり俺一人じゃ無理なのか……? これだけやっても最強格アラタさんの足元にも及ばないなら……もう、──、


『────後ろめたい事ばっかりでホント嫌になるよ全く……特に、君はね!』


 ……………………もう、いっそ──、


『ちょいちょーい? いま僕めっちゃかっこいい瞬間と台詞言ったつもりだけど? ボルテージ最高潮の人気がまた鰻登りしちゃいかけたけど? おーい、復活キャンセラー来栖音! ちょっ、ホントに気付いてよ!?』


 ……………………もういっそッ!?


『あ、うん、気付いた? なに今の反応』


 ……どうやら、軽く気絶してたみたいだ。

 そうだよな、オロチ。諦めるなんてまだ早いよな!

 俺、これから頑張るからさ! 貴様もどっかで見といてくれよな!


『待て待て待て!? 違うよー、違うよ? 回想とかで居なくなった奴が元気付けるとか喝入れるとかよくあるパターンであるけど、違うよ? モノホンだよー? というかさりげなく『貴様』呼びした? したよね? うわすっごい。このツッコミする感覚。随分と久しぶりな気がするよ』


 ……どうやらまだ幻聴が聞こえるようだ。


『おーい気付けよいい加減。しつこいって!?』


 何の前触れも無く帰ってきた事に困惑が生じているが今はとりあえず言うべき言葉を伝えよう。


「────オロチ」

『?』

「おかえり」

『! あはは。寝坊してゴメンね? それと来栖音……ただいま。遅くなったよ』

「待たせすぎ。罰として……アラタさんを一緒に倒すよ」

『なーんだ。そんな優しくていいの?』


 病み上がりだろ? 容赦せず最初から全力でアラタさんにぶつけていくよ。


「いい加減に、来栖音さんをッ!」

「だから何回も言わせないでくれる? ウチとクスの触れ合いを──」

「アラタさん」

「ッ! フフッ。まだ戦れるわね?」

「来栖音サン!?」

「良かったわ。……無事だったのね、クスネ!」


 闘気が高まっていくのが感じ取れる。さぁ、反撃開始のお時間だ。


「『神変闘化』」

「ふーん……なるほど。中々面白そうじゃない。さっきよりかは楽しめそうね!」

「【武装】を構えて下さい。油断してると、負けますよ?」

「戯言をッ!」


 アラタさんは最初と変わらないスタイルを貫くらしいが……さて、考えよう。

 アラタさんの鎌の自動攻防は恐らく何らかの条件発動型の能力だろう。


『さてさて、来栖音には分かるかな?』


 久々に登場したから調子に乗ってるっぽいオロチが腹立たしい。コイツこれで対処法が分かってるのがそのイラつきを加速させている。


 ……一旦アラタさんに探りを入れてみるか。


「アラタさんの能力って──」

「教えないわよ」


 やっぱダメか。


『諦め早』


 うるさい黙れ黙れバカバカアホアホあんぽんたんでべそ。


『語彙力消えた?』


 ちょっと取り乱した。……会話による発動では無いとなると予測としては二つ。

 一つは、アラタさん自身が鎌を動かしてる。これが一番有力な可能性だ。しかしそれだとアラタさんとの会話中に攻撃が飛んで来ないのは不自然だ。隙あり! とかなんなりして俺を迎撃するなんて芸当は楽勝だったはずだ。

 二つ目は、アラタさん以外からのナニカ……具体的には敵意や殺意といった。もしこれだったら驚く他ない。無理ゲーだと嘆きそうになる。

 少しでもその気があったら反撃を喰らうというクソルールを相手次第でずっと押し付ける事が出来るからな。


 でも今の俺ならば、少し反撃の糸口が見えてきた。


「推理は順調そうね」

「お陰様で、アラタさんを倒せそうです」

「大口叩くのもこれでおしまい……ねッ!」


 一番初めにここに訪れた時の挨拶よりも何倍も速い鎌の投擲が襲撃してくる。マトモに喰らったらタダでは済みそうにないな。

 さて頼むぞ……俺の推測が当たっているなら上手くいってくれよ!


 俺はアラタさんへと脚部に闘力を集中させ、

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