第2話
僕が教室に戻ってきた頃にはいつも通りの昭子に戻っていて、机も元通りになっていた。周りの女子はちらちらと彼女を見ながら陰口を叩いているように見えた。しかし、彼女はそれを見向きもせず1時間目の数学の予習をしていた。その様子を見れば、まるで冷酷で感情のない人間のようだが私は知っている。彼女は確かにあの時泣いていた。しかし悲しいのではない。他人に侮辱されるという悔しさと、僕にその涙を見られ、自分の弱さを知られてしまった絶望感だと。
「昭子さん。今日学校来るの早かったよね。」
千明が友人達と目を合わせながら、クスクスと笑いを堪えながら昭子に尋ねた。千明は、バスケットボール部に所属する同じクラスの女子だ。彼女は明朗で、男女問わず慕われるような人間だ。しかし、クラスを自分の物かのように思っている。誰かが自分の尻尾を踏めば、倍にして返す。友達という名の所有物を振り回して、傍若無人に振る舞う。しかし、そんな彼女には誰も逆らえはしない為、彼女には誰にもNoも言わない。
「今日は数学の小テストがあるので、早く来たかったんです。」
昭子は笑っているのか、睨んでいるのかわからないような目つきで彼女らを見た。
「そう。あんたなんてもう内申点もいいんだから別に勉強なんかしなくてもいいんじゃない?馬鹿真面目だから嫌われんのよ。」
千明はそう吐き捨て友人達と何処かへ行ってしまった。僕は彼女達の行動が理解できなかった。別に昭子はお前とは関係無いじゃないか。皮肉を言うためだけに話しかけるだなんて信じられない。僕はそんな風が吹けば倒れてしまうような柔な正義感を感じながら昭子を眺めていた。
吸う 生きている @mohayasaikou
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