青い夕景、河のほとりで

スギモトトオル

本文

 青く滲んでいく街は、対岸にもその喧噪と灯りが届いていた。

 夜の訪れを待ち切れないネオン。移動し明滅する車のランプ。終わらない一日を象徴するオフィス街の照明。

 川を挟んで煌めくそれらの営み。夜が来ては朝になり、昼が暮れてまた夜になる。傷ついたレコードが途中で戻ってしまうみたいに、何度でも果てなく繰り返す。きっと、終わらせ方を知らないのだ。

 昼は昼の人たちが、夜は夜の人たちが喧騒の中にいて、絶え間なく街を賑やかに彩っている。街は眠る暇がない。人々の営みがひとつひとつ合わさって大きなうねりとなって、街は日ごとに成長する怪物のようだ。

 いつか僕も、あのうねりの中の小さな一部になるんだろうか。

 川を越えて吹く風が、ざわざわと僕の毛並みをくすぐった。


 頭上からため息が一つ。見知った男の呆れ顔が見下ろしていた。

「何を言っているんだい、君はペンギンじゃないか。さあ、家へ早く帰ろう。新鮮なイワシが手に入ったから」

 わ!イワシ好き!食べる!

 ご主人さまだ~いすき!ぺんぺ~ん!


<fin>



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