第六章 最後の戦い
第一話 ブリヤートの黒い思惑
大戦終結から三ヶ月が過ぎた。
ヒトラーは、12月末に行われる党大会にて自身の総統引退と次の総統、党の指導者を決めるべく、連日重役会議を行なっていた。
「今日は以上だ。何か他に伝えることがあれば言いたまえ。」
手を挙げたのは、リューネスブルクだった。
「総統、ブリヤートが先の大戦においての結果報告を求めています。」
その言葉に、一同がざわめいた。
「なぜだ、ブリヤートがそんなことを求めて何になる。」
「奴らは鶏一羽も送ってこなかった傍観者だ。それなのに何故我らの情報を渡す必要がある?」
一同がざわつくのを、ヒトラーは咳払いでやめさせた。
「ともかく読みたまえ。」
「はい…拝啓、この度は貴国の戦争勝利に祝福のお言葉を送らさせていただきます。さて、今回手紙を送ったのは理由がございます。一つは、先の大戦において結んだ条約により、東ディヴィジョンのブリヤート編入。二つ目は、領土拡大に伴い、貴国を世界連合五代議長国の一つへ推薦する手紙を書くことです。それでは、二つの件をお認めになられるのならば、一週間以内に返事を下さることをお望みいたします。」
その内容を聞いて、ヒトラーを始め全員が反発した。
「冗談を言うな!そんな事条約には書いてない!」
「それに、今更議長国になんかなる必要はない。我が国は鳴神と共に世界連合を抜けたのだからな!」
確かに、今やプライセンは他国との同盟は必要ないかもしれない。
しかしプライセンには、ブリヤートとユナイテッドという二つの強国が残っていた。この2国を倒さない限りは、ヒトラーの世界統一など夢のまた夢なのだ。
「総統。ここは、鳴神を動かすべきではないでしょうか。」
鳴神は、プライセンがアルザスやリーグレを倒した際に極東地方に持っていた植民地を手に入れていた。プライセンが本国を倒した際のおこぼれを貰っていたのである。
「鳴神か…あの国に、ブリヤートかユナイテッドを倒してもらうとするか。」
その頃鳴神は、前例のないバブル経済に入っていた。
多くの国民が、国家公務員ほどの収入を得ており中には海外に別荘を持つものまでいた。国全体が眠らない街となり、どんな田舎者であろうと一億は持っている状態であった。
「連日連夜、祭りだそうで。」
「お恥ずかしながら、楽しませていただいておます。」
リューネスブルク自身も、到着と途端に金の雨を降らされた。
「さて、本日来たのは他でもない。貴国にユナイテッドかブリヤートを倒していただきたい。」
その声を聞いた途端、部屋にいる全員が静かになった。
「…それが、遥々お越しになった理由で?」
「もちろんです。我が総統、直々に。」
「…よし、皆は席を外せ。」
外交官とリューネスブルク以外の全員が部屋を出て行った。
「もし貴国がブリヤートを攻めていただけるなら、我が国は西から攻め込んで挟み撃ちを。ユナイテッドを攻めるならば、プライセンとブリヤートの連合で補助をいたします。」
「なるほど…つまり、攻めるのに助けがいる。補助するから手伝うか、攻めるならば助けてやると。」
「はい、総統もそれをお望みです。」
外交官はそれを聞くと、立ってうろうろとして…
「この件は御前会議にて話題といたします。一ヶ月以内には結果をお見せしましょう。」
リューネスブルクはその言葉を契約とし、プライセンへ帰還した。」
「総統!リューネスブルクが帰ってきました。」
「結果を聞こうか。」
「はい、鳴神は一ヶ月以内には結果を見せるとのことでした。」
その言葉に軍幹部はざわめいた。
「冗談を言うな。こちらには一週間しか猶予がないのに。」
「鳴神め、自国のことを最優先にしたのか!」
「まあまあ待て。鳴神だって今他国との戦争をする気にはない。ブリヤートにはこの話は断るとの電通を書いて送っておけ。」
こうして、プライセンとブリヤートの間に新たな亀裂が入っていくことになる。
今また、ゴースランド大陸に血の歴史が綴られようとしていた。
異世界の鉄十字 ミア・スターリング @kokusutia
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