第6話 兄の登場

 兄。そうだ、兄だ。何故か、直感的にそう思った。器が関係しているのであろうか。

「フミちゃん、お見合い断るの!?」

「怒らないでください」

「怒る?なんで?僕はフミちゃんのお見合いに反対だったんだよ?うれしいに決まってるでしょう?」

狂っている。そう思った。「人間失格」の私からでもこの人が「常識人ではない、イかれている人」であることはわかった。

「僕はね、この、清く、純粋な、潔白なね、フミちゃんにね、幸せになってほしいの。なのに自由結婚じゃないだなんてクソだよ」

「私、結婚したくない」

文乃がそういうと、「兄」は顔を輝かせた。万人が惚れるであろう顔で。

「そう!!!!んじゃあ僕がお父様に、いや...この場合クソ親父と呼ぶべきかな...まあ取り敢えず言ってくるね!」

そういって去っていった。なんという嵐、である。

 私は、シスコンで、怖そう、いや、メンヘラな兄を持っているらしい。「人間失格」である私は彼をどのように使うか、だけを考えていた。

 しかし、どうしたものか。普通、二次創作(少しだけ嗜んでいた)では、「やあ、神です」などと言って、分かりにくい説明をキャラに言い、そのまま転生させる(馬鹿にするつもりはない)。然し私は何だ?時々あるいきなり転生系と一緒ではないか。これが一番面倒臭い。何の説明もないまま、よくわからない世界に飛ばされた。日本であれば、まだ希望はあったのに。これは完全に西洋である。

 そして、この本棚を見た時の違和感は何だ?初めてこの本棚を見た時からの違和感。...そうだ、そういえば、小説らしい背表紙がない!そうだ、そうなのだ。床から天井まで、びっしりと本が詰まっているのにも関わらず、無いのだ、それが。一冊ずつ、鍛えられた速読で確認していく。ダーウィンの進化論、メンデルの遺伝学、パスツールの種痘研究、メンデレーエフの元素周期表、秦に関する歴史書、オスマン帝国の歴史書について、.....無い。無い。なんで。

 わかったことがいくつもある。この家には王族の血が入っていること、王族は世界でも有名な科学者であること。.....そして、ここは前の世界では存在しない大陸であることだ。






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文豪好きが小説がない世界に転生したので私が文豪になってやる cran @cran0424

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