第5話 転生...ね
あー、変わんねえなあ。
思わず口調が崩れた。人間は崖っぷちに立たされると返って冷静になるという事は本当であった。寝具の上で胡坐をかく。沈黙。
此れは夢なのであろうか。にしてはあまりにも自由が利きすぎる。そして、かなりの違和感。
「西洋?」
なるほど。違和感の理由はこれか、と一人で納得する。さて、この部屋の見た目の説明をしよう。安心してほしいのだが、前回のようにホラーではない(あれはもう狂乱である)。分かりやすいように、大雑把に説明すると、右に窓、左にソファ、前に机、反対に本棚、である。本棚の本の背表紙には見知らぬ文字が。だが時々同じ文字があるので同一言語であろう。やはり此処は異世界で、私は転生、を、してしまったのであろう。私はえらい人間なのだろうか。やけに豪華である。
しばらくすると、扉がノックされる。まったくもって言語を聞き取られないのではないか、そう懸念を抱いたが、それはすぐに不要になった。
「お嬢様、今日はパーティーの日でございます。ご準備を」
「いやだ、と言いて頂いてよろしいでしょうか」
文乃は悪びれず言った。もうご存じであろうが、文乃は「人間失格」である。
「なぜです???」
「行く意味、あります?」
もう一度言おう、文乃は「人間失格」である。元々あった、「私はえらいのではないか」という考えが確立されたのだ。面倒臭そうな物事はしっかりことわるべきなのだ。
「昨日もお話いたしましたが、お見合いでございます」
自分の器、であろうか、兎に角、「自分ではない何者か」が「やめておけ」と言っている。
「気が変わりました。嫌です」
「...旦那様に申し上げてきます」
足音が離れていった。
さて、現状を整理したい。先ずは本棚から見てみようか。文乃は本を本棚から取り出す。起きたばかりとは違い、今度は、まるで日本語を読んでいるかのように、はっきりと、鮮明に、読むことができた。体が慣れてきたのであろうか。内容はこうである。
619年、19月9日、人類は滅亡しかけた。
此れである。...ひたすらこの文章が書かれているのだ。19月、とは。一体。
しかし、猛スピードで近づいてくる何か、足音、人間を感じられた。次の瞬間、部屋の扉が大きい音を立てて開いた。
「フミちゃーーーーーーーーーーん!!!!!!!」
視界の端に何か、黒いもの、物体、人間。人間!?横腹に大きな衝撃が走った。
「兄ちゃ...!?」
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