第4話 好きで好きで仕方が無い御方の後を追うのは当然のことであろう。

 私は、東大、東京大学に入学したい。何故か。学歴を得たい.....研究がしたい.....社邪位に貢献したい.....など、そんな一般的なものでは無い。いたって簡単なものである。そう、それは「太宰治様が東大に入ったから」である。後を追いたいのだ。私は。最期は玉川で誰かと心中という事も決めている。

 私は所謂「人間失格」なのであろう。自惚れとかでは無く。私のクラスメイトに対する態度は完全に「お道化」であろう。本当は名前を覚えていなく、しかし名を聞いても憤慨されるであろう(陰で。女とは怖いものだ。普段はとても仲が良く、肩まで組んでいるというのにいざいなくなれば悪口の嵐である。私は何回も悪口を聞かされた。名も覚えていないというのに)。あゝ、面倒臭い。しかしこれもまた、太宰治様と、ほかの文豪様方を尊敬するからである。

 人間は「完璧な人間」というものに興味を抱き、しかしそれと同時に恐怖も抱く。「わからない」からである。「完璧な人間」というものは一般的に頭がよく、愛想がよく、しかし適度な距離を置き、男であれば背が高く、(これが好みによるかもしれない。世の中には低身長の男を愛すものが一定数居るのだ)女であれば胸が適度に大きく(こちらのほうがより、好みによるであろう)、運動神経が良く、家事をすべてこなせ、絵がうまく、活舌が良く、顔が良く、声が良いような人間なのであろう(他にもあるかもしれないが)。だが、だからこそ、嘘がうまいのである。彼らは人間がどんなに愚かで滑稽で、恐ろしいかを知っているのだ。それだから何も考えずに相手の心の内側に入る人間にとって、もしくは入り込んだと思い込んでいる者にとって、「完璧な人間」とは難攻不落の城なのである。無血開城は如何足掻いても不可能であろう。

 つまり、何が言いたいかというと、私は何者かに無暗矢鱈に詮索される前に相手を、私が「完璧な人間」であると信じ込ませ、本を読む時間を作っているのである。それも何もかも、あの方々を尊敬しているからである。

 しかし誤算もあった。それは教師からの信頼を得、少々面倒なこと(例えば返却物を返したり)を時々任せられるようになってしまったことである。然し、これに依って、教師との関係性が増え、内申点が良くなるチャンスを得らえるのであれば、結果的には良かったのであろうか。

 私はこのようなことを考えながら、一日を過ごし、眠りについた。

 そして、目が覚めたら此の有様である。知らない天井、縮んでいる身長、見知らぬ文字。いつまでも文豪脳であった私は脳が爆発してしまったのか。再び目の前が真っ黒になり、体が後ろに倒れていくのを最後に辛うじて感じた。





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