【素案】ドラゴンの通り道

 私は飛行機雲と地震雲の区別がつかない。あの日、天を覆ったのは地震雲だったのだろう。

 地震雲の存在を知ったのはまだ物心をつく前だった。私を怖がらせて面白がっていた近所のガキ大将が、飛行機雲を指差して「雨が降るかも」と言った私に向かって「違うよ、地震雲だ! もうすぐ地震が来るぞ!」と脅してきたことがことの始まりだった。

 天気予報の簡単な本に書いてあった「飛行機雲が長く残るときは雨が降る」という知識を、ただ無邪気に披露しただけだった。地震雲なんてないよ、あれは飛行機が通った後だと主張できなかった私は、うつむいて家に帰った。

 ガキ大将は、その姿を面白がりたかっただけだろう。ただの子どもの戯れ言だった。けれど私は否定されたことがショックで、よせばいいのに地震雲について調べてしまった。


 大地震の前に飛行機雲に似た雲が天に筋を描く。


 本の写真には、確かに飛行機雲に似たものが掲載されていた。図書館で調べたあの本にもこの本にも。まさか、今まで見ていた飛行機雲は飛行機によってつくられたものでは無かった?と、疑心暗鬼に陥った私は、空を見上げるのが恐ろしくなった。


 飛行機が見えるものは安心した。あれは飛行機雲だ。

 飛行機がいるのかいないのか分からない長い筋。あれは何なのだろうか。


 地震が来るかもしれない。もしかしたら家が壊れるほどの揺れかもしれない。という余計な恐怖が、身体を支配していく。


 私は天を仰げない子になった。


 それから何年も経ったある日、友だちが指さす先にひとすじの飛行機雲があった。

 「雨が降るかも~」と笑いながら言った友人の指さす先を、見たくないのにと渋々見上げた久しぶりの空には、天をまっぷたつに割るような、飛行機雲なのだろうかと思う程くっきりと太い筋を作っていた。胸の奥底をチクリと刺すような警告を無視して「そうだね」と曖昧に返事をする。


 直後、大きな地震が起きた。


 地の底から何かが叩いたのかと思う程の大きな衝撃があったかと思うと、次の瞬間横揺れが続いた。自分では何もできないほどの揺れに思わずその場にしゃがむ。恐怖がじわりと体の中心から全身に広がって動けない。

 生まれて一度も味わった事のない感覚は簡単に私をパニックに陥れた。


 揺れが落ち着いても立ち上がれない。目の奥底がじんじんと痛む。


 見てしまったのだ、私は。幼いころから恐れていたあの雲を。


 飛行機雲を見て天気を占ったあの日々を懐かしく、そして遠い昔のことのように思う。

 またいつか、無邪気に天を仰ぐ日が来るのだろうか。

 目の奥に焼き付いた一筋の雲が、晴れた日の飛行機雲のように消えて無くなる日が。




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お題:ひこうき雲

文字数:制限なし(と記憶している)

条件:自分の思いが何かしら入っていること

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結果

文字数:1066文字(素案)

条件:自分のトラウマ追体験(幼い頃に飛行機雲が怖くて見られない理由が地震雲)

テーマ:トラウマの克服

総評:

素案なので、これに関しては仕上がった作品との対比として意見をいただいた。

元々は自分の体験(大地震)と照らし合わせ、風景の美しさと対比して恐ろしさを感じて貰えればよかったのだが……経験があるからこそ読むのは辛いかもしれない。


出来上がった作品は「ドラゴンの通り道」とタイトルにもあるように、ゴリゴリファンタジー。そのため、現代ドラマで登録しているこちらへの掲載は控える。

そのうち同人誌にするかもしれないが、その場合はこの作品と対で掲載したほうが面白いと感じてはいただけるか……? その時は改稿は必要だろうが。

一時間足らずで書き出したただの素案に目を通してくださりありがとうございました。


課題:素案で殴り書きのため現稿では考えておらず。あれば教えてください。

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短編集:現代ドラマ MURASAKI @Mura_saki

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