文芸部の280

くらまい

第1話

 僕の日常は、いつも通り、変わらぬルーティーンを繰り返していたある日のことだ。毎日、授業が終わるとすぐに家に帰る僕には友達との会話や部活動というものがなかった。そんな僕にクラスメイトの山田が、「お前、Twitter上できっとユニークな短編小説が書けるんじゃないか?」と提案したのだ。


 それは冗談だと僕は思ったが、山田の表情はまったく冗談を言っているようには見えなかった。彼は僕の授業中に書いているノートや休み時間に書くメモに興味があった。「何か面白そうなアイデアがあるんじゃないかって思ってさ。試しにやってみるのはどうだ?」彼はそう続けた。だけど、僕には自信がまるでなかった。しかし山田は僕を信じていた。「さあ、挑戦してみろよ、280文字で物語を書いてみてはどうだ?」と言って、スマホを渡してくれた。


 その夜、自宅の部屋で僕は山田の言葉を思い出しながら、スマホをいじっていた。心中で躊躇い、迷いつつも、最終的には山田の言葉を信じてみることにした。そして、一つ深呼吸してから、自分の心を鼓舞し、思い切って自分が考えた280文字の短編小説をTwitterに投稿した。




 次の日、クラスメイトたちが僕に声をかけてきた。「昨日のTwitterの投稿、すごく面白かったよ!」と。それから僕は自分の作品に自信を持ち始め、短編小説を次々と投稿した。


 数日後、再び山田が僕に声をかけてきた。「お前の投稿、かなり評判いいじゃないか。もっと大きなステージで試してみたら?」そう言って、彼は僕に文芸部への入部を勧めてきた。僕は少し迷っていたが、クラスメイトからの暖かい言葉や、フォロワーたちからの励ましのコメントに心打たれ、僕は深呼吸をして入部を決めた。


 そして、僕が初めて文芸部の部室に足を踏み入れたその瞬間、僕を待っていたのはアイデアが飛び交い、意見がぶつかり合う、活気あふれる空間だった。でも、僕はそこで自分の場所を見つけ、これからもTwitterに280文字の短編小説を投稿し続けることを心に誓った。




 文芸部の活動が始まり、僕たちは毎回テーマを決め、そのテーマに沿った280文字の短編小説を書くことになった。僕が入部した当初は、緊張して上手く文章を書けない日もあったが、部員たちの励ましやアドバイスを受け、少しずつ自信がついてきた。


 部員たちは皆個性的で、それぞれが異なるスタイルの短編小説を書いていた。佐々木さんはシュールなユーモアが絶妙なギャグ小説を得意としており、田中さんは深い心理描写が魅力的な恋愛小説を書くのが上手だった。そして、僕は次第に、自分だけの、情景を色鮮やかに描くことに長けた280文字短編小説のスタイルが見つかっていくのを感じた。


 ある日、文芸部の顧問である先生が学園祭のイベントについて話を持ちかけてきた。「今年の学園祭では、私たち文芸部も何か面白いことができないだろうか」と先生が提案してくれた。そして、部員たちと相談の末、「280文字短編小説対決」というイベントを考え出すことになった。


 イベントの内容はシンプルで、僕たち文芸部員が学園祭の舞台で、観客から与えられたお題に基づいて280文字短編小説を作り、その場で対決するというものだった。僕たちは、これを成功させるために、学園祭前の週末から積極的に練習を始めた。


 毎週末、部室で集まってお題を出し合い、時には笑い、時には悩みながら280文字短編小説を試行錯誤して書いていた。その間、僕たちは互いにアドバイスを送り合い、自分たちの作品をブラッシュアップしていった。その過程で、自分の作品に対するプライドと、お互いに切磋琢磨する仲間の存在が、僕たち文芸部員の励みになった。


 学園祭が近づくにつれて、僕たち文芸部員はますます練習に熱心に取り組んだ。そして、ついに学園祭の日が来た。部室で練習を重ね、心に刻んだ成果を発表するため、僕たちは舞台に立ち、280文字短編小説対決に挑んだ。この経験を通じて、部員たちの絆が一層深まり、僕たち文芸部は新たな一歩を踏み出した。




 学園祭の当日、僕たちの280文字短編小説対決が始まり、部員たちはそれぞれの技術を競い合った。舞台では笑い声と感動が交錯し、僕たち文芸部のイベントは大成功に終わった。


 しかし、学園祭が終わった後、僕は突如として小説を書くためのインスピレーションを見失ってしまった。Twitterへの投稿が途絶え、文芸部の活動にも参加する気力が湧かなくなった。僕が途中で停滞してしまったことで、部の雰囲気は暗く沈んでいった。部員たちはそれぞれが自分なりの悩みやプレッシャーを感じ始めた。


 そんな時、山田からの呼び出しを受けて、部員全員が集まる場所へと向かった。山田が率先して話し始め、「ここまでこれたのは、みんなが励まし合ったからだ。だから、何か悩みがあるなら話そう。一緒に解決策を見つけよう」と力強く言った。


 その言葉に触発され、部員たちは次々と自分たちの悩みを明かし始めた。佐々木さんは新しいギャグを思いつかないことに困っており、田中さんは恋愛小説のストーリー展開につまずいていた。そして、僕もその場で自分の悩みを正直に打ち明けた。「成功することが怖くて、何を書けばいいのかわからなくなってしまった」と。


 山田は僕たち一人ひとりを見つめて、「大丈夫だ、それならみんなで一緒に280文字短編小説にどう向き合うか考えよう。成功も失敗も恐れずに前に進もう」と提案した。


 僕たちは山田の言葉に感銘を受け、お互いを助け合うことを誓った。それこそが、僕たち文芸部が再び立ち上がるきっかけとなった。




 部員たちからの励ましを受け、僕たちは力を合わせて文芸部の活動を再開した。新たな短編小説のアイデアを共有し、ワークショップ形式で280文字の小説を書く取り組みを開始した。


 さらに、僕たちは部活動を通じて他のクラブやサークルと交流を深めた。文化祭のオープンマイクイベントでは、僕たちが作成した280文字短編小説を朗読した。興味津々に耳を傾ける生徒たちの反応を見て、僕たちは一層団結することができた。


 また、僕たちは文芸部の経験を活かし、他校の文芸部とも交流を深め、互いに切磋琢磨する関係を築いた。さらなるステップアップを図るため、学生主導の合同文芸誌の計画が持ち上がり、僕たちは全員で力を合わせて取り組むことを決めた。


 合同文芸誌の企画が進行する中で、僕たちは自分たちの役割を見つけ、それぞれが活躍した。僕は280文字短編小説のセクションを担当し、山田は全体のコーディネーター、編集長として活動した。他校の生徒たちとのコミュニケーションを通じ、互いに学び、成長した。


 ついに、合同文芸誌の発行日がきた。僕たちの成長や学びの結晶が詰まった一冊を手に取った瞬間、僕たちは誇らしさで胸がいっぱいになった。「これが終わりではなく、次回に向けてさらに良い作品を作ろう」と心に誓った。


 そして、卒業式の日、僕たちは最後の瞬間を部員として迎えた。お互いに支え合い、成長してきた日々を胸に、僕たちは新たな道へと歩み出した。文芸部での経験は、かけがえのない宝物となり、僕たちの成長を促した。そして、これからもお互いの人生を応援しながら、僕たちは文字と共に歩むことを誓った。

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