紅蓮のアスカ

@wasiro_iceriser

2294年 4月 某日


『常駐警備員、並びに現在勤務中の職員に連絡します。アラート発令、アラート発令。推定警戒レベル青、非A.I.R.Sエアーズユーザーの職員は直ちに避難を推奨します。繰り返します…』


 真白の大樹に、燃え盛る緋色

 日本国の中枢を担っていた、窓のない、のっぺりとした塔は、今や唯一の出入り口である門を完全に破壊され、その残骸から見える激しい揺らめきだけが中の惨状の語り部となっている


『警戒レベル青、避難を推奨します』


 機械的なアナウンスだけが響く無機質な廊下

 本来いるはずの多数の職員たちはどこにもおらず、ただ男の影が一人、炎の中を歩いている

 男の顔に表情は見えず、凡そ人間性のある風には見えない

 いや、そもそもそれ以前に、彼の身体には不可思議な部分がある。朧げに、しかしはっきりと、彼の身体が“ぶれて”いるのだ

 確かに彼は人型だ。四肢があり、地を踏んで、大手を振りながら燃え盛る空間を歩いている。だが彼に被さるようにして、もう一人の影が見える

 それはあかく、鋭く、見ていて痛くなるほど、燃えていた

 

『警戒レベル確定、特殊シークエンスの承認を確認しました。特殊警戒レベル黒、【怪人】の侵入を確認しました』

 


 2294年 4月某日。

 怪獣の都市内部への出現、侵入を防ぐ唯一無二のバリアドーム生成タワー『白塔ユグドラシル』に正体不明の【なにか】が侵入。タワー内を蹂躙後、目標は消失し行方不明。白昼堂々の犯行を以って、私たちの安全は崩壊した

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