お初にお目にかかれます

もちっぱち

おしゃべりタイム

「お初にお目にかかります!」


お母さんは読み聞かせをする前に話し始めた。


「え?なになに?」


「あなたの相棒のアイマスクです。どうぞよろしくお願いします。」


 お母さんは僕の目の上に手を広げて置いた。


「え?え?」


「私はアイマスク、まだまだ新人で目を全て隠すことができません。」


手が動いて、ちらちらと手の向こう側が

見え隠れする。


「えー大変ですね。」



「そうなんです。お願いがあるのですが、早めに寝ていただけると私のマイマスクパワーが進化しまして、だんだんとすべての目を隠すことができるんです。どうです?やってみますか?」



「はい!やります。やらせていただきます。」


僕はお母さんの話に乗っかった。


「それでは、目を閉じて、100まで数を数えてください。」


「1、2、3、4、5、6、7、8、9、……。」


 数えていくうちにお母さんの手は閉じていき、目がだんだんと隠れていく。


ちょっと待てよ…。これをするということは、今日は絵本を読まずして、寝てくださいということかな。


僕は真実を読んだ。


「わぁ!! お母さん、絵本、読んでないよ?」


「ん? どういうことかな。今、アイマスクのレベルアップ中…。」



「そうじゃなくて,絵本、ほら、図書館で借りてきたやつ、読んでくれるって言ってたでしょう?」


「あ……きづいちゃいました?」


「うん。覚えてます!!」


「お初にお目にかかります。掛けふとんと申します。私、今日は、敷きふとんと一緒にやってまいりました。それでは、時間も時間ですし、それでは、そろそろ失礼致します。」


「何しに来たー?!」


「いやいや、ご挨拶だけに。」


「ちょっと、違うでしょう。絵本読むんでしょう。」


「え、だから。こんばんは。掛けふとんです。一緒に中に入りましょう。明日も早いんですよね。では、この辺で。ぐーぐーぐー。」


 絵本の読み渋るお母さん。


「それ言うのいいから、これ読んで。」


「はいはい。えっとー、むかしむかしあるところにおじいさんとおばあさんがいました。さて、おばあさんは何をするのか!?来週に乞うご期待。」


「まだ始まったばかり!読んでないー。」


「え、来週だよ。」


「はいはい。そして、おばあさんは、芝刈りにおじいさんは川へ洗濯に行きました。」


「えー、逆でしょう。おばあさんが山に行ってるよ。」



「そういうときもあるかもしれないでしょう。」


「そういうときはないよ。ちゃんと文字読んで。」


「無理~。」


 なかなか進まない絵本の読み聞かせ。



そんな親子の時間もいいのかもしれないですね。





おしまい。

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お初にお目にかかれます もちっぱち @mochippachi

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