魔女といふ

桂花

魔女といふ

まだ何も知らぬくちびる花芙蓉


列車去りホーム色なき風の中


夕映へにとり残されし秋津かな


遮断機が上がり秋気にすれ違ふ


書き出しの決まらぬ手紙桐一葉 


逢ひたさに醒めて月下の真中まなかかな


きみが今眠れる時刻しずり雪


魔女といふ名の口紅や冬薔薇そうび 


薄氷をふむ沈黙にたへかねて


くちびるを探しあてたる春の闇


迷ひ出てふたり朧のひととなる


風向きの変はり木蓮崩れけり


鳥雲に入りお互ひのゆびを解き


蛍飛びいよいよ昏き夜空かな


浜木綿に足囚わるる汀かな


しばらくは別れを思ふ洗ひ髪


積雲の崩れて近し神の島


もう逢へぬことうべなひて半夏生


はずしたる風鈴にまた風の来て


思ひ出も飛ばされさうな南風みなみかな



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魔女といふ 桂花 @kueihua72

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