お金にしばられない暮らし 🥬

上月くるを

お金にしばられない暮らし 🥬





 ぜいたくな衣食住、煌びやかな肩書、まして名誉職などフリーになって色褪せた。

 自前の名刺を飾り立てたいがための現職さながらの熾烈な正副争い……醜いよね。


 若い世代の苦労をよそに相変わらず自分にお金をかけるなんぞは我執の象徴だし。

 よくまあそんなんで何十年も無駄に生きて来たよね、なかったの? 学びの機会。




      🌿




 日ごろのそんな思い(決して口にはせず(笑))を裏書きしてくれる番組を観た。

 一度しかない人生、お金にしばられる暮らしからの脱出を試みる、ふたりの女性。


 ひとりは知識も経験もないのに、夫とふたりで移動可能な七畳余の家をつくった。

 ひとりは高学歴もIT職歴もなげうって、手の平サイズの微笑仏師の職人になった。


 右も左も分からず懸命に取り組むうち、地に足の着いた暮らしを営み始めている。

 都会生活のまばゆいキラキラと引き換えに、哲学的&思慮深い笑顔を手に入れた。




      🌆




 ややもすると、国として老年期に向かっていると称されることもあるこの国だが、ではと自らに問いたい、青年期や壮年期にあったわたしたち、本当に幸せだったか。


 派手な扇子に躍らされ、お金お金と目の色を変え、だれかと競争することばかりにうつつを抜かし、これでいいのか立ち止まって考える余裕も与えられなかった……。


 地道な生き方を模索する若い世代の身なりが素朴なことに憐みの目を向ける高齢者がもしいたとしたら、気の毒に最後まで文明の解毒の恩恵を受けられないだろうね。




      🍏




 できれば、ヨウコさんの大切なひとたちにも、そういう生き方を選択して欲しい。

 それぞれの事情があるからすぐには無理だろうけど、自分が消えてからでも……。


 そのためにもいまは必要性を感じないかも知れない故郷を残しておいてやりたい。

 お金の呪縛からの解放……そこには原初的な営みの静かな歓喜がきっとあるはず。




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