戦い、殺し尽くせ! ゴブリン大戦

一般人A

第1話

 その平原はたくさんの血肉により赤黒くなっている。そこで大柄な人影と小柄な人影が殺し合っている。


 互いに己が武器を振るい、ぶつける。それに伴い激しい金属の衝突音が鳴る。



「ガアァァァ!!」

「オォォォォ!!」


 同じく空気を払わせる怒号が鳴る。それは物理的な衝撃波になり骸たちを吹き飛ばす。


 両者の共通する特徴としてどちらも緑色の肌に尖った耳、醜悪な顔。そのことから導き出される答えは最弱種、ゴブリンだ。


 

 だが、本当にそうか?


 大柄なゴブリンの分厚く硬い筋肉、圧倒的な覇気。これでもまだ最弱と呼べるか?


 彼はこの大陸にいる数多の支配者の1人。支配者のなかでは底辺だが、最強種たるドラゴンに迫る強さを持っている。


 この大陸内ではゴブリンは最弱ではなく最強。



 そんな彼の名はオルガ。大草原"ウォン"の支配者たる盗賊王。禍々しい大斧を振るう。


 彼と対時するのはまだ無名なゴブリン、ノクス。質素な剣に魔力を纏わせ奮戦する。しかし、


 「ぐゔぅぅぅ!」


 だんだんと差が出始め、ついにノクスが吹き飛ばされる。


 「手こずらせやがって。もう俺以外いねぇ。むしゃくしゃするぜぇ。お前は配下にしねぇで痛ぶってやる!オラァ!!」


 オルガの太い脚により思いっきり蹴られ、吹っ飛んでいく。

 

 「アアァァァ!!」


 「オラァ!!」


 また蹴り飛ばされる。


 「ガッ、ゴフッ!」


 血が込み上げてくる。もう体は限界である。


 たまらなく悔しい。こんなところで死にたくない。


 『クソクソクソ!力が欲しい!アイツを殺せる力が!』


 力が欲しい。そう願ったとき、脳内に何者かが語りかけてきた。


『素質があると感じて来てみたら、ゴブリンだったとは。だけどいいや。力が欲しいんだろう?いいよあげるよ。その代わりに私を見つけて助けてね。』


  ノクスに何かが流れ込んだ。瞬時にその力を理解し、唱える。


「【ヒール】。」


 ノクスを白い光の粒子が包み込み、立ち上がれる程に体を癒した。


 「回復魔法か。回復しても俺には勝てねえ。」


 ノクスもそれはわかっている。だから、


 「【エンチャント】。」


 「なっ?!」


 二つ目の魔法を使う。彼の剣に白い粒子が纏う。それは神聖な力を付与する。彼の剣は今はと化している。


 オルガは忌々しい力をみて呆然とした。

 

「アァァァ!」


 そこにノクスは切り付ける。


 慌てて防御したが拙く、大斧は弾き飛ばされてしまった。


「アァァァ!」


 ノクスは隙を与えず、切りまくる。


 「ガッ、ガッ、ガアァァァ!」


 オルガは切られるたびに激痛が走る。その上力が削られている感じがする。いや、間違いなく削られている。


 ノクスが使っているのは聖属性。ゴブリンなどの魔物に絶大な効果を発揮する。抗うことはできるがには、無理だ。対抗手段の一つとして対になる属性を使えばいいが、オルガは使えない。


 もうオルガには勝ち目がない。


 「これで終わりだあぁぁ!」


 「こんな、こんなところで!」


 「アァァァ!」


 首を飛ばされてオルガは死んだ。ノクスに莫大な魔力が流れ込む。


 すぐにノクスは黒い繭に包まれる。


 これは進化。ある一定の魔力を保有することにより行われる、世界からの祝福。


 進化した彼はゴブリンの勇者、ゴブリンブレイブとなった。









 「わあ勝ったよ。それにゴブリンブレイブかあ。」


 彼女は水晶の中に封印されている。


 「強くなって私を助けてね。」


 彼女は願う。彼が奴らを倒し、助けてくれるのを。












 「よく集まってくださいました。今日、神託がきました。勇者が誕生したと。」


 周りの信者たちがざわめく。


 「よって探しましょう。。」


 邪神を信仰する邪教徒が動き出した。












 「大草原"ウォン"の支配者オルガの反応がなくなりました。」


 「ふむ、新たな強者が生まれたか。さて、どこまで登ってくるのか楽しみだ。」


 禍々しい玉座の間で彼は期待する。どこまで楽しませられるのかを。















 「次はどこに行こうか。」


 ノクスは旅に出る。約束を果たすために。

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