しきの景色

此糸桜樺

しきの景色

萌黄色 新芽の命が眩しくて光る玉は、真珠か露か


春盛り 水溜に揺蕩たゆたう薄紅 揺れてはたゆむ幻と同じ


南風 吹き抜けないで此処にいて「死ぬまで一緒」の約束のため











暗闇に開く華はイワハナビ 散り際急ぐ儚き最後


屋台から漏れる朱色に濡れる道 僕らの上には雌黄しおうと橙


フィルム越しパシャリと撮るは君の笑顔 ずっと見てたいずっと傍で


「来年も」そう言う僕は残酷で 花火に紛れ君の「できたらね」











額縁に緋色の山を飾りつつ 涼風吹き込む騒がしい病室


紅葉狩り今年の秋はお預けで 「来年行こう」と手を握る僕


「行きたい」と微笑む君の本音から涙が見える 生きたい、と


色褪せて額縁の山は枯れつつもはたと気がつく これは窓かと











風花や 落ちる花弁は静寂でぽつりぽつりと紡ぐ言の葉


純白の下に眠るは朽葉色 一年草の運命と知れども


「春が好き」君の言葉に頷くも 春を祈り 春を恐れる


凍えつつ小さきつぼみに願掛けし ここで尽きるな 春まで堪えよ











陽が隠れ鼠色の世界には 君の笑顔はもう咲かない













萌黄色 新芽の命が恨めしく君を探してそっとくうを掴む


桜散る水溜に沈む薄紅 雨の降ったは僕と同じ


南風 背中を押すは君の声「私の分まで生きて、どうか」


──しきを待ち季節移ろふ色彩は 君と同じく美しかった

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しきの景色 此糸桜樺 @Kabazakura

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