第45話 2皿目完成!

 さて、カナッペ作ってくぞー!


 ポマード状にしたバターに、塩とマスタードを入れよく混ぜ、カリカリパン全てにテーブルナイフで塗ってく。


 それにしても「ポマード」なんて、子供の頃に聞いた口裂け女の話にしか出てこない死語なんだけど。

 料理業界では健在用語。

 似たもんでみんなが知ってるのだとハンドクリームかなあ。

 ハンドクリーム状とかそんな言い方は、長すぎるし不味そうだなぁ。

 ポマードも相当不味そうだけど、リアルに全く想像できないから、逆にいいのかも。



 残しておいたブロック1/3パプリカを裏漉す。

 それを柔らめておいたクリームチーズと混ぜて塩で味を整え。

 可愛いいオレンジ色がかったピンクのクリームができた。

 潰したパン5枚を並べ、クリームを分厚く塗り、上にもう1枚載せる。

 横をテーブルナイフではみ出てないように、キッカリ撫で付ける。

 お湯で温め拭いたナイフで、パンの切れ目に沿ってクリームを切り、ここのキューブサンドにする。

 切れ目のスッキリとした面を上に盛り付ければ、スタイリッシュな印象の仕上がり。



 白パンの方に、昼間作ったチーズ入りベシャメルソースをこんもりドーム状に塗る。

 クレールにさっき出してもらった、くるくる回してチーズを削る器具で、グリュイエールチーズのふわふわを作る。

 たっぷりほんわりとチーズを盛って、まあるい白に近い淡い黄色のお山の上に、アクセントに胡桃を1粒飾る。



 黒パンを使った3種を仕上げよう。


 オリーブオイルで和えただけの赤ピーマンに塩を加え、多めに縦に揃えて乗せる。

 色味にイタリアンパセリもひと葉っぱ飾る。赤と緑の艶やかさがシンプルだけど良い。



 次は甘酢パプリカバージョン。

 ちょっとカラメルがかった赤茶。

 上に少量のアボカドを切って乗せ、アンチョビをその上乗せる。

 茶色いイメージに、優しいアボカドのグリーンが活きてる。

 



 アボカドの半分だけを裏漉し、クレームドゥーブルと、レモンがないから変色防止にワインビネガーをほんの少しだけ混ぜて、塩胡椒。

 それをたっぷり盛って半球みたくまあるくならし、蟹の身を乗せる。

 残りの蟹はいつ使おうかな~、冷蔵庫にしまっとこ。

 これも薄緑のお山に白と赤っぽい蟹で、春というか可愛らしい1品となった。



 2口大サイズのカナッペが勢揃いした。

 ざっくり言えば、赤2つ、白1つ、緑1つ、焼きパンから覗くピンク1つだ。

 味は凝っているものの、見た目1つ1つはとりわけ凝った装飾ではない。

 でもこうして並べると色とりどりで、楽しい気持ちにしてくれる。


 『5種のカナッペ』2皿目が完成!



♦︎



 ほうれん草の茎を、ちょっぴりのオリーブオイル、今度は違う風味のビネガー、塩胡椒で和え、3枚のお皿の中央に横一列に敷く。


 マスタードとオリーブを乳化させ、そこにトマトの種汁を入れて塩胡椒で味を整えソースを作る。



♦︎


 また使った道具を洗ってと。

 ささみを焼くとかは食べながらでいっかな。

 うん、もう声かけに行こう。


 2人がどこにいるかわからなかったので、廊下の突き当たりで

「お洗濯ありがとう! お料理出来たよー!」

と大きな声を張り上げてみた。


 うーん……ノーリアクション。


 脱衣洗面所の部屋に入り、もう一度。

 すると奥のドアが開いて、こっちこっちと、クレールが手招きをした。


 入るとそこは、例のクリア素材で出来た、吹き抜けのサンルームといった洗濯干し場だった。


「うわーぁ! なんだかいい場所だね~!」

洗濯機と、広くないながらも小さなテーブルや椅子も置いてあって、お洒落なコインランドリーみたいだ、と思った。


「コニーこっちきてちょっと手伸ばしてみて」


 あ、ありゃっ……


「やっぱりな」

「だね」


 そう、物干しに手が届かなかったのだ。

 くっそー!!


「だ、大丈夫だよ。これ。こっちのボタン、ほら」


 ウィーンというモーター音が上からしたので見上げると、さっきの固定の物とは別に、上から鎖で吊るされたバーが降りてきた。

 これ、新築の友人のマイホームで見た電動物干し竿と一緒だ。


「干す場所が足りない時用のやつだよ。こっちを使うといいよ。

すぐにコニー用の小さい物干し台も用意するからね。

コニーは手渡する係とか、当面は僕らと一緒にやろう!」


「ちっこくて可愛いな。

さてとー。こっちも終わったから行くか」


 ぽんぽんと、またエタンが私の頭の上に手をやった。

 今のは優しくされたってよりも、小さい子扱いされた気分だよ。


 絶対に今の上からのエタン圧力で、1㎜背が縮んだに違いない、プンスカ!



「手で摘んで食べるやつだから、手を洗って行こうね~」


「あのカリカリパンとか、巻いてたやつとか、細かく切ってた野菜とか。いったい最後はどうなったんだろう。すごく楽しみだよ」


「あ、そっか。結局組み立て見せられなかったね」


「俺は赤パプリカしっかり食いたいな。初めは真っ黒焦げの食い物手に持ってるから、正直ビビったけどな」


「僕なんか風呂のあと廊下に出たら、煙がもうもうしてるわ焦げ臭いわで、火事か!? って肝が冷えたよ」


「うう、それはごめんって。さあさあ行こ行こ」


 みんなで居間に戻ってきて、私は冷蔵庫からサーモン渦巻きの皿を出して振り向くと、アイランドキッチンに置いておいたカナッペに、2人は釘付けになっていた。


「カウンターで? それともソファーで食べるならカナッペの大皿持って行ってくれると助かる」


「コニーこれ凄いよ! こんな小さな美しい宝物みたいな食事は見たことがない!」

クレールが興奮気味にカナッペ皿にがぶり寄った。


「マジか……こんな風になるとは夢にも思わなかったぜ……」


「んもう、大袈裟だな~。嬉しいけど、食べてからたっぷり褒めて~。

エタンはこれお任せしてもいいかな? 私、取り皿とフォークを持ってくから」


 手が掛かかるわりには、このカナッペって。

 そう派手じゃないシンプルな印象だから、まずは見た目で喜んで貰えて何より。


 ローテーブルに皿を置いた彼らは、物理的に輝く瞳をさらに好奇心でキラキラさせて、ソファーに座って2皿を食い入るように見つめていた。


「何か乾杯のお酒、用意を頼んでも良いかしら?」


 2人揃ってハッと顔を上げ、おおそうだな、アレにするか? やっぱアレだろう、なんて言いながら、クレールは貯蔵庫へ、エタンはグラスを出しにいそいそ動き出した。






-----------------------------------------------



近況報告「舌先三寸 45話 5種のカナッペ」にてイラストアップします。


【次回予告 第46話 乾杯再び】

さあ、いざ実食です♪


♡、コメントお忘れなきよう(*´-`)

準備はいいですか? イラスト見に近況行きましょうかね〜。じゃあ、レッツクリック!

https://kakuyomu.jp/users/ayaaki/news/16817330661810965189


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る