第45話 2皿目完成!
︎
さて、カナッペ作ってくぞー!
ポマード状にしたバターに、塩とマスタードを入れよく混ぜ、カリカリパン全てにテーブルナイフで塗ってく。
それにしても「ポマード」なんて、子供の頃に聞いた口裂け女の話にしか出てこない死語なんだけど。
料理業界では健在用語。
似たもんでみんなが知ってるのだとハンドクリームかなあ。
ハンドクリーム状とかそんな言い方は、長すぎるし不味そうだなぁ。
ポマードも相当不味そうだけど、リアルに全く想像できないから、逆にいいのかも。
♢
残しておいたブロック1/3パプリカを裏漉す。
それを柔らめておいたクリームチーズと混ぜて塩で味を整え。
可愛いいオレンジ色がかったピンクのクリームができた。
潰したパン5枚を並べ、クリームを分厚く塗り、上にもう1枚載せる。
横をテーブルナイフではみ出てないように、キッカリ撫で付ける。
お湯で温め拭いたナイフで、パンの切れ目に沿ってクリームを切り、ここのキューブサンドにする。
切れ目のスッキリとした面を上に盛り付ければ、スタイリッシュな印象の仕上がり。
♢
白パンの方に、昼間作ったチーズ入りベシャメルソースをこんもりドーム状に塗る。
クレールにさっき出してもらった、くるくる回してチーズを削る器具で、グリュイエールチーズのふわふわを作る。
たっぷりほんわりとチーズを盛って、まあるい白に近い淡い黄色のお山の上に、アクセントに胡桃を1粒飾る。
♢
黒パンを使った3種を仕上げよう。
オリーブオイルで和えただけの赤ピーマンに塩を加え、多めに縦に揃えて乗せる。
色味にイタリアンパセリもひと葉っぱ飾る。赤と緑の艶やかさがシンプルだけど良い。
♢
次は甘酢パプリカバージョン。
ちょっとカラメルがかった赤茶。
上に少量のアボカドを切って乗せ、アンチョビをその上乗せる。
茶色いイメージに、優しいアボカドのグリーンが活きてる。
♢
アボカドの半分だけを裏漉し、クレームドゥーブルと、レモンがないから変色防止にワインビネガーをほんの少しだけ混ぜて、塩胡椒。
それをたっぷり盛って半球みたくまあるくならし、蟹の身を乗せる。
残りの蟹はいつ使おうかな~、冷蔵庫にしまっとこ。
これも薄緑のお山に白と赤っぽい蟹で、春というか可愛らしい1品となった。
♢
2口大サイズのカナッペが勢揃いした。
ざっくり言えば、赤2つ、白1つ、緑1つ、焼きパンから覗くピンク1つだ。
味は凝っているものの、見た目1つ1つはとりわけ凝った装飾ではない。
でもこうして並べると色とりどりで、楽しい気持ちにしてくれる。
『5種のカナッペ』2皿目が完成!
♦︎
ほうれん草の茎を、ちょっぴりのオリーブオイル、今度は違う風味のビネガー、塩胡椒で和え、3枚のお皿の中央に横一列に敷く。
マスタードとオリーブを乳化させ、そこにトマトの種汁を入れて塩胡椒で味を整えソースを作る。
♦︎
また使った道具を洗ってと。
ささみを焼くとかは食べながらでいっかな。
うん、もう声かけに行こう。
2人がどこにいるかわからなかったので、廊下の突き当たりで
「お洗濯ありがとう! お料理出来たよー!」
と大きな声を張り上げてみた。
うーん……ノーリアクション。
脱衣洗面所の部屋に入り、もう一度。
すると奥のドアが開いて、こっちこっちと、クレールが手招きをした。
入るとそこは、例のクリア素材で出来た、吹き抜けのサンルームといった洗濯干し場だった。
「うわーぁ! なんだかいい場所だね~!」
洗濯機と、広くないながらも小さなテーブルや椅子も置いてあって、お洒落なコインランドリーみたいだ、と思った。
「コニーこっちきてちょっと手伸ばしてみて」
あ、ありゃっ……
「やっぱりな」
「だね」
そう、物干しに手が届かなかったのだ。
くっそー!!
「だ、大丈夫だよ。これ。こっちのボタン、ほら」
ウィーンというモーター音が上からしたので見上げると、さっきの固定の物とは別に、上から鎖で吊るされたバーが降りてきた。
これ、新築の友人のマイホームで見た電動物干し竿と一緒だ。
「干す場所が足りない時用のやつだよ。こっちを使うといいよ。
すぐにコニー用の小さい物干し台も用意するからね。
コニーは手渡する係とか、当面は僕らと一緒にやろう!」
「ちっこくて可愛いな。
さてとー。こっちも終わったから行くか」
ぽんぽんと、またエタンが私の頭の上に手をやった。
今のは優しくされたってよりも、小さい子扱いされた気分だよ。
絶対に今の上からのエタン圧力で、1㎜背が縮んだに違いない、プンスカ!
「手で摘んで食べるやつだから、手を洗って行こうね~」
「あのカリカリパンとか、巻いてたやつとか、細かく切ってた野菜とか。いったい最後はどうなったんだろう。すごく楽しみだよ」
「あ、そっか。結局組み立て見せられなかったね」
「俺は赤パプリカしっかり食いたいな。初めは真っ黒焦げの食い物手に持ってるから、正直ビビったけどな」
「僕なんか風呂のあと廊下に出たら、煙がもうもうしてるわ焦げ臭いわで、火事か!? って肝が冷えたよ」
「うう、それはごめんって。さあさあ行こ行こ」
みんなで居間に戻ってきて、私は冷蔵庫からサーモン渦巻きの皿を出して振り向くと、アイランドキッチンに置いておいたカナッペに、2人は釘付けになっていた。
「カウンターで? それともソファーで食べるならカナッペの大皿持って行ってくれると助かる」
「コニーこれ凄いよ! こんな小さな美しい宝物みたいな食事は見たことがない!」
クレールが興奮気味にカナッペ皿にがぶり寄った。
「マジか……こんな風になるとは夢にも思わなかったぜ……」
「んもう、大袈裟だな~。嬉しいけど、食べてからたっぷり褒めて~。
エタンはこれお任せしてもいいかな? 私、取り皿とフォークを持ってくから」
手が掛かかるわりには、このカナッペって。
そう派手じゃないシンプルな印象だから、まずは見た目で喜んで貰えて何より。
ローテーブルに皿を置いた彼らは、物理的に輝く瞳をさらに好奇心でキラキラさせて、ソファーに座って2皿を食い入るように見つめていた。
「何か乾杯のお酒、用意を頼んでも良いかしら?」
2人揃ってハッと顔を上げ、おおそうだな、アレにするか? やっぱアレだろう、なんて言いながら、クレールは貯蔵庫へ、エタンはグラスを出しにいそいそ動き出した。
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近況報告「舌先三寸 45話 5種のカナッペ」にてイラストアップします。
【次回予告 第46話 乾杯再び】
さあ、いざ実食です♪
♡、コメントお忘れなきよう(*´-`)
準備はいいですか? イラスト見に近況行きましょうかね〜。じゃあ、レッツクリック!
https://kakuyomu.jp/users/ayaaki/news/16817330661810965189
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