第17話(最終話)魔寄せの娘、幸せな結末

 ウェディングドレスに身を包んだソフィアと、タキシード姿のナハト。

 ソフィアの冒険と愛の結末が、この教会でひとつの終焉を迎えようとしていた。


 勇者モルゲンの死によって一時は混乱に陥っていた王国だったが、ソフィアや王国騎士団から報告を受けた国王は、「長年信仰してきた勇者がただの化け物だったなんて」と嘆いていた。


 ソフィアは「王魔親善大使」の称号を得た。要するに王国と魔国の橋渡しとして、二国間の関係改善に奔走する役職だ。

 彼女の魔国への交渉により、魔族は二度と人間を襲わないと約束してくれた。


 その交渉での交換条件となったのが、魔王ナハトとの婚姻である。

 ソフィアはナハトと正式な夫婦になるため、婚姻の儀を改めて開くことになった。


 魔王は今や王国を救った英雄だ。

 国王は顔の整った魔王に王女を差し出そうとしたが、魔王は謹んで固辞した。彼には既に、ソフィアという運命の伴侶がいたのだから。


 魔国式の婚姻の儀では、お互いの恋愛感情を打ち明け合う風習がある。

 互いの気持ちを再確認し、それをお互いに了承した上で、夫婦となるのだ。


「ソフィア、俺は今まで俺はお前の気持ちを考えず、無理やりデートに連れ出したり、手紙を送り付けたりもしたが……これからはお前の気持ちにも、きちんと向き合いたい。ニンゲンと魔族の立場を超えて、支え合うために尽力する。どうか、これを受け取ってくれないか」


 ナハトが差し出したのは、彼が丹精込めて育てた薔薇を使ったブーケ。彼がソフィアを想って手作りしたものだ。

 ソフィアもナハトに向かって、唇を開く。


「私の冒険は、お前を討ち倒すためのものだった。『魔寄せの力』のせいで、村を追放され、長い長い旅をして……この力が、本当に嫌だった。ナハトが魔王だと知ったときも、連れ去られたときも、私の心は憎しみに染まっていた。けれど、お前と一緒に過ごすうちに、本当に私を想ってくれていることを知って、戸惑って……いつの間にか、私もお前が好きになっていた。これから先は、王国と魔国の橋渡しとして、お前と一緒に歩んでいきたい」


 そうして、ソフィアはナハトの薔薇のブーケを受け取った。

 教会には、村から招待された両親がソフィアを見守っている。

 ナハトがそっとソフィアの顔を覆っているヴェールを指で持ち上げる。

 ソフィアは目を閉じて、ナハトの唇を受け入れたのであった。


 ――こうして、『魔寄せの娘』ソフィアは、魔王と結ばれ、幸せな生活への一歩を踏み出したのである。


〈了〉

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呪われし魔寄せの娘は魔王に溺愛される 永久保セツナ @0922

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