第11話 先生の雑用係

「おはようございますステファン君! 」


 次の日。学校に登校する途中でステファンはマーシャと遭遇する。マーシャは元気よく挨拶をして来る。


「ああ、おはようマーシャ……」


 ステファンの方は昨日の事でまだ眠いらしく、少し声に覇気がない。


「どうしたのですか? 非常に眠そうですね? 」


「ああ……ちょっと夜更かししてしまってね」


 適当な言い訳である。実際は朝が弱いだけだ。


「ふーん……あ! もしかしてエ、エッチな本でも読んでたのでは!? ダ、ダメですよ〜! そういう本は男の子だからしょうがないかもしれませんけど」


「え……? あ、違うから……そんな卑猥な本は読んでないからね。適当に本を読んでいただけだから」


「へぇ……どんな本を? 」


「そ、それは……」


(まずいな……咄嵯に出た言い訳とはいえ、この世界の女の子が読むような恋愛小説なんかを言ってたら絶対引かれるよなぁ)


「ま、まあ色々だよ……その辺はご想像に任せるよ」


「うわっ……怪しいですねぇ〜。まぁ聞かないでおいてあげます」


「ははは……」


 なんとか誤魔化す事には成功したようだ。


 そして二人は学校へと辿り着く。


「おう! おはよう! ステファンとマーシャ。元気か? 」


 普段と変わらずハキハキした口調でアサカ先生が挨拶をする。


「はい、おはようございます先生」


「おはよございます」


 ステファンとマーシャはいつも通り挨拶を返す。


「よし! しっかり挨拶を返して宜しい! おい! お前も挨拶をしろよ! 」


 アサカ先生はハルカの方を全力で叩く。


「痛ったいわね! 何すんのよ!? 」


「こら! 教師に向かってなんだその口の聞き方は!? 」


「…はいはい、すみません」


「全くお前という奴は……。いじめの加害者は黙って従え」


「お、おはようございます」


 順々にアサカ先生の命令に従い、ハルカは丁寧にあいさつをする。15度ほど頭を傾けて。


「うむ! 宜しい! 」


 完全にアサカ先生とハルカで上下関係は完成する。


「それといじめの被害者のマーシャに誠意を込めて謝罪しろ! 」


「…………ごめんなさい」


 アサカ先生の指示により、ハルカは渋々と謝る。深々と頭を下げて。


「…」


 マーシャは黙ってハルカを見つめる。まだ怯えが瞳に残る。流石に許せないのもあるだろうが、それ以上にハルカに対する恐怖心が強いのだ。


「勘違いするなよ。マーシャは決してお前を許してないからな。その証拠にうんともすんとも口にしてないだろ」


「はい……」


「そいうことだ。それから、今日の私の1時間目の授業の準備を頼む。昨日約束しただろ? 1月間私の雑用を承るのも罰のうちだと」


「はい…….承知いたしましたアサカ先生」


 ハルカはアサカ先生の言葉に逆らえず、素直に従う。

「宜しい宜しい。いじめの加害者だからしっかり思い罰を受けて反省しないとな。じゃあ頼んだぞ~」


 ひらひらとアサカ先生は手を振ると、両手に持っていた大量の資料をハルカに押し付ける。ハルカに重い資料が圧し掛かる。


「……」


(まあ、これでいいのか……。いじめは思い罰を受けるに値する行為だと思うしな)


 無言でハルカを凝視するマーシャを見て、ステファンはそう思うのであった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

死にたいと思っていた俺が、寝て起きたら西洋風の建物が並ぶ異世界に転移していた。いじめの対処法スキルだけは豊富に持ち合わせているため、いじめで苦しむ学校の美少女達を救う。すると、好意を持たれてしまった。 白金豪 @shirogane4869

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ