#2花火大会とオウム返し


※「」のついていない箇所はモノローグです。


-お話はここから-

 

アミ:「スガくん、今週の土曜日空いてる?」

…これで良いかな(微笑む)


ユウト:あ、アミさんからだ

職場にいるときに連絡なんて、急用とかかな?


アミ:「花火大会、一緒に行かない?」


ユウト:…っ!!!花火大会?!

アミさんからお誘いが来た!!


アミ:「立川の昭和記念公園なんだけど」


ユウト:土曜日は家具見に行きたいなと思って立川には元々行く予定だったけど、予定変更で…!

「土曜日空いてますよ、一緒に行きましょう!」


-花火大会当日


アミ:つい勢いで誘ってみたけど

スガくん、無理矢理予定合わせてくれたりしてないかな?

職場の先輩からの誘いだから断れないとか…

……なんか、緊張する


ユウト:電車の中もすごい人だったな

立川駅も人、人、人…!!

アミさん、人混みに酔ったりしてるんじゃ…

いやいや、それは無いか〜

通勤ラッシュの電車に平日毎日乗ってるんだから…

……って!あれ!!


アミ:「………うぅ…」


ユウト:「アミさん!こっちです!!」


アミ:「浴衣姿の……す、スガくん…!」


ユウト:「ちゃんと掴まってください!」


アミ:「う、うん…」


ユウト:「…!!アミさん、それ裾をちょこっと掴んでるだけになってますよ!」


アミ:「ダメ?」


ユウト:「はぐれちゃうのでダメです、手繋ぎますよ」


アミ:「わっ…!!」


ユウト:「ロータリーも人だらけなんで、下に降ります」


アミ:「うん」


-ロータリー下に到着


ユウト:「駅からここまで道が全部人で埋め尽くされてましたね…」


アミ:「私ひとりだったら迷子になってたかも(笑)

で、手は繋いだまま?」


ユウト:「はい、アミさんが迷子になったら困るので」


アミ:「なんか…恥ずかしいな(照)」


ユウト:「僕も少し恥ずかしいです(照)

でも、このまま手を繋いだままで会場へ行きますよ」


アミ:「うん」


ユウト:にしても、アミさん浴衣似合い過ぎ!かわいさが反則すぎる!!

「アミさん、また小首傾げしてますよ?」


アミ:「えっ?……あ、また小首傾げてる?私」


ユウト:「僕の前だから良いですけど、職場では小首傾げは絶対に禁止です」


アミ:「?…なんで?」


ユウト:「なんでって……もう!

いい加減、察してください(笑)」


アミ:「スガくん?」


ユウト:「…会場まで、少し歩きますよ」


アミ:「うん、ふふ(笑)」


ユウト:「なにか面白いこと、ありました?」


アミ:「スガくん、耳真っ赤(笑)」


ユウト:「…っ〜!!(照)」


アミ:「あ!」


ユウト:「ん?」


アミ:「さっきの浴衣の女の子が持ってたの風船かな?

変わった形してる………えっ?光った!かわいい!!」


ユウト:「お祭でしか見ない光る玩具ですね

今年は何色にも光るようになってるのか」


アミ:「あの狐面、浴衣によく合うね!

…あ、スガくんの浴衣にも合いそう!」


ユウト:「そうですか?」


アミ:「うん、よし!お面屋さん探そ♪」


ユウト:「はあ…お面ってお祭終わってから使うこと無いと思うんですけど」


アミ:「無粋なこと言わないの!」


ユウト:「え?!」


アミ:「お祭が終わっても、お面を見たら今日の思い出が蘇るというか…なんというか…ね!」


ユウト:「僕はお面が無くても今日のことを覚えてる自信、ありますよ?」


アミ:「私も今日のこと、忘れない自信あるよ!」


ユウト:「…アミさん」




アミ:「そうだ、スガくん」


ユウト:「なんですか?」


アミ:「これから私と職場以外で話すときは敬語禁止!」


ユウト:「な、いきなりどうしたんですか?!」


アミ:「スガくん、職場以外ではアミさんって呼んでくれるけど…少し違和感があってね、」


ユウト:「違和感…?」


アミ:「で、その違和感の正体が今日わかったの」


ユウト:「その違和感、とは?」


アミ:「スガくんが私に対して常に敬語なの!」


ユウト:「ええっ?!違和感って敬語使うところだったんですか?!」


アミ:「そう!ほら!やっぱり違和感ある!」


ユウト:「じゃあ僕、敬語使いません!……あっ!」


アミ:「さっそく敬語使った!」


ユウト:「アミさん、揚げ足取らないで!」


アミ:「揚げ足取った?何のこと?」


ユウト:「(ふくれる)アミさん」


アミ:「私、結構意地悪なんだよ?」


ユウト:「たしかに意地悪…」


アミ:「ふふ(笑)」


ユウト:「じゃあ、アミさんも僕のことスガくん呼び禁止!」


アミ:「え?」


ユウト:「ユウトでもユーちゃんでも良いから、職場以外スガくん呼び禁止!」


アミ:「スガくん?」


ユウト:「さっそくスガくん呼びしたー!」


アミ:「ごめん、わざとスガくん呼びした(笑)」


ユウト:「アミさんの意地悪」


アミ:「ねえ、ユウトくん」


ユウト:「なに?アミさん」


アミ:「お腹空いてきちゃった」


ユウト:「ぷっ(笑う)本当に自由だなあ、アミさんは」

職場でのミカドアミさんは後輩たちに慕われる頼りになるかっこいい先輩社員。

この前だって…




-先週の職場にて


アミ:「スガくん、元気無いね」


ユウト:「すみません…ミスが続いて少し凹んでました」


アミ:「そうなの?」


-アミがユウトの額に手を当てる


ユウト:「ミカド先輩?!」


アミ:「おでこ熱いよ、今日無理して出勤したでしょ?」


ユウト:「…あはは……(鼻をすする)」


アミ:「はい、これ」


ユウト:「…冷えピタ…?」


アミ:「本当はすぐ帰宅して欲しいけど、

スガくんは今日のミスは今日中に片付けたいんでしょ?」


ユウト:「…はい、ミカド先輩はなんでもお見通しですね」


アミ:「うちの部署は頑張り屋さんが多くて無茶する人多いから

私は私に出来る範囲で精一杯のサポートが出来たらいいなって思ってるの

まあ、全員のサポートはさすがに難しいけどね」


ユウト:「ミカド先輩…」

職場のアミさんは自身の仕事も多いのに

困ってる人がいたらその人の仕事が円滑に進むようにすぐサポートに入る。

あと…今、僕にしてくれたように

無理してる人がなぜ無理をするのか

理解をして、声をかけてくれる。

…本当にかっこいい先輩。




アミ:「たこ焼き、お好み焼き…焼きそば……ソースの香りが……

あ、さっき見た光る風船の横にお面屋さんある!」


ユウト:(ボソッと)「…本当にかわいい」


アミ:「ユウトくん?何か言った?」


ユウト:「アミさんは食いしん坊だなって独り言言ってた」


アミ:「これだけ良い香りしてたらお腹どんどん空いちゃうよ〜」


ユウト:「これ食べてひと息つこう」


アミ:「あ!たまごせんべい!

ユウトくん、いつの間に?」


ユウト:「アミさんの知らぬ間に」


アミ:「知らぬ間にって(笑)ありがとうユウトくん」


ユウト:「実はこれも」


アミ:「冷えたビール!いつの間に?!」


ユウト:「これもアミさんの知らぬ間に」


アミ:「あはは(笑)今日は本当に楽しいなあ」


ユウト:「僕の方が楽しんでる」


アミ:「私の方が楽しんでるよ」


-笑い合う二人、ほぼ同時に花火が打ち上がる


アミ:「花火始まっちゃった!」


ユウト:「座る場所、無さそう」


アミ:「立ち見で大丈夫だよ」


ユウト:「あっち行こう、はい手出して」


アミ:「うん、……え?」


ユウト:「はぐれないように手、繋ぐよ」


アミ:「…うん…(照)」


-花火が次々と打ち上がる


アミ:「大玉の花火、キレイだな〜

(たまごせんべいをひと口食べる)黄身が半熟で美味しいね、たまごせんべい!」


ユウト:「冷えたビールによく合うね

って、花火見るより食べる方がメインになってる(笑)」


アミ:「キレイな花火を見ながらユウトくんと食べるたまごせんべいが美味しいの(笑)」


ユウト:「やっぱり食べる方がメイ…ン……ん??!!」


アミ:「どうしたの?」


ユウト:「アミさん、いまなんて言った?!」


アミ:「え?さっきのこと??」


-一番大玉の花火が打ち上がる


ユウト:「花火はキレイだけど、音が大きくて聴こえない!……っ!!」


-ユウトの耳元で呟くアミ


アミ:「ユウトくんと一緒に来れて本当に良かった」


ユウト:「……!!(照れる)」


アミ:「今日は私がユウトくんのエスコートしちゃったかな?

ま、私は武蔵野市民の先輩だからね」


ユウト:「ねぇ、アミさん…」


アミ:「どうしたの?」


ユウト:「僕の思い……アミさんに届いてる?」


アミ:「………」


ユウト:「アミさん!」


-アミ、ユウトの頬にキスをする


ユウト:「っああああ!!(全力で照れる)

あ、あああアミさんん???!!!」


アミ:「ほっぺにソース付いてたよ…(笑)」


ユウト:「し、心臓に悪過ぎる……」


アミ:「ふふ(笑)、またユウトくんに意地悪しちゃったね」


ユウト:「本当にアミさんは意地悪だ」


アミ:「ユウトくんも私に意地悪するじゃない、おあいこ様だよ」


ユウト:「コホン、今から大切なことを言うから意地悪しないでね、アミさん」


アミ:「うん」


ユウト:「ぼ、僕と」


アミ:「僕と?」


ユウト:「また小首傾げにオウム返し!あと、僕が大切なこと言うって言ったのに相づち打たないで!相づちはまだだから!」


アミ:「はい」


ユウト:「僕と、お付き合いしてください!!!」


-次々と花火が打ち上がる


アミ:「……ユウトくん」


ユウト:「………」


-空に大輪の花が咲く


アミ:「(照れながら)…よろしくお願いします」


ユウト:「……!!やった!!!」


アミ:「ユウトくん、かわいい(笑)」


ユウト:「あ、意地悪発言!」


アミ:「私に意地悪って言い過ぎ(笑)

あ、今度は口元にソースついてる」


-キスをする二人を大輪の花火が照らす


ユウト:「…本当にかわいいな、アミさんは」


アミ:「ユウトくんの方がかわいいよ?」


ユウト:「アミさんの必殺オウム返しだ」


アミ:「また私、オウム返ししてた?」


ユウト:「今日もたくさんオウム返ししてた

…小首傾げもオウム返しもかわいすぎるから職場では禁止!」


アミ:「えっ?!そんな、どっちもしてないのにー!」


ユウト:「完全にクセなんだよなあ」


アミ:「…でも、ユウトくんがかわいいって言ってくれるから……このクセは、なおさないよ!」


ユウト:「今は職場じゃないし、僕が一緒にいるから小首傾げとオウム返ししても大丈夫だよ」


アミ:「ユウトくんったら…(笑)」


-笑い合う二人の真上には

本日最後の大玉花火が打ち上がっていた


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

先輩はかわいいものが好きすぎる ネコ山 @nekoyama0312

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ