後悔…戻らない日々
二学期最初の登校日。一緒に登下校していた俺達はいつも駅前でお互いを待っていた。でも、夏祭り同様、涼だけは来ない。学校に遅刻しない程度の時間まで薫と一緒に待っていた。それでも涼が来ることはなかった。学校に着き、教室に入ると、涼の姿があった。話しかけようとしたが、タイミング悪く先生が来てしまい、話しかけることもできない。HRが終わると、俺は涼の元へ駆け寄り、「おはよう。なぁ、涼、逃げないで話そう。誤解してるだけなんだ」と話しかける。だが、涼は俯き「ごめん……話したくない」と小声で言った。それでも諦めずに涼に話しかける。だが、涼は話したくないと言うばかりで……最後には潤んだ目で俺を見つめた。それ以上は何も言えなかった。大人しく自分の席に戻り、時々涼の様子を伺う。その日の休み時間、俺は廊下に出て薫と話した。
「涼は、涼はなんか言ってた?」
焦る薫に、落ち着いた声で「……話したくないって」と答える。
「なんで、聞いてもらえれば誤解だって……」
「でも、涼が話したくないっていうんだ。だから、少し時間を置こう」
薫は段々と悲観的になっていき、自分が悪いんだと責めるようになった。俺は悩むばかりで何ひとつ解決方法が浮かばない。帰宅後、涼から送られてきたのは「落ち着くまで話しかけないでほしい……、その時が来たら私から話しかけるから」それだけだった。一週間、二週間と過ぎても……、涼からメッセージもなければ電話もない。もちろん、学校で話しかけてくることもなかった。薫から笑顔は消え、俺も笑わなくなった。迫ってくる受験……勉強をしなければいけない。でも、涼の事が頭から離れず、集中できない。
涼と話さなくなって一ヵ月が経った。もう二度と話さなくなってしまうのだろうか、そんな不安で一杯だった時。「遅くなってごめん。今日の放課後、三人で話そう」と涼からメッセージが送られてきた。俺はすぐに返信する。今日の放課後、俺と涼の教室手……三人で久しぶりに話す機会ができた。早く放課後にならないかと待ち遠しくなる。放課後になると、他に仲良くなった友達を昇降口に見送ってくると言い、涼は教室を出て行く。俺は薫と共に教室で待っていた。
「やっと、やっと涼と話せる……」
薫は嬉しそうに泣いていた。俺もようやく話せることに安堵していた。泣きすぎて過呼吸になりそうな薫の背中をさする。泣き顔が廊下を通る生徒から見えないように、自分の身体で薫の顔を隠した。しばらく経ったとき、教室の扉が開く音がした。入ってきたのは、今にも泣きそうな顔をしている涼だった。涼は俺が声をかける前に教室を飛び出してしまう。追いかけようと教室の扉に手をかけた時、スマホにメッセージが送られてきた。
「ごめん、もう二人とは話せない」
俺と薫は涼と話せる機会を失ってしまった。きっと俺達には諦める選択しか残されていない。それでも、俺は薫を置いて教室を出た。選択肢がひとつしか残されなくても、望みをかけたい。俺は校舎を飛び出し、通学路を走る。
(間に合ってくれ……)
走って走って、汗だくになって。それでも、間に合うことはなかった。心に穴が開いたようで、涙を流すことさえできなかった。諦めるしかなかったんだ……。
卒業までの残り五ヶ月間、何も楽しくなかった。ただ自分を責める日々。そして、受験に合格したのにも関わらず、涼に告白することは叶わないまま。俺は高校を卒業した。俺は希望の大学へと進むが、そこ
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