あの日……
土日を挟み、登校日を迎える。薫の体調も良くなったようで俺と涼は安心した。球技大会が終わると期末試験が待っている。期末試験が終わると、もう夏休みだ。勉強ばかりの日々は変わらず、これから始まる夏休みも楽しんではいられない。唯一、夏祭りだけは三人で遊ぶ約束をしており、ただ、その日が待ち遠しかった。高校最後の夏休みに入ると、三人で勉強する日もあれば、ひとり音楽を聴きながら勉強する日もあった。でも、いつだって勉強するモチベーションを上げてくれるのは夏祭りと、涼との約束だった。
夏祭りの一週間前、その日の午前中。俺と涼、薫の三人で学校に来ていた。大学の見学レポートを担任の先生に提出するために。朝から熱く照り付ける太陽。学校の職員室は寒いほど冷房が効いていて外に出たくなくなるようだ。涼は先生に残るよう言われ、俺と薫は先に校門へと向かった。
「マジであつい……」
薫が持っていたファイルで仰ぎ始める。
「ほんとだよな。早く、涼来ないかな」
俺が何度も校舎の方を振り返っていると、薫が顔を近づけ「ねぇ……本当に受験に合格したら涼に告白するの?」と言った。「うん」と頷いても、薫は疑ったような目で「絶対に約束してくれる?」と俺をじっと見つめる。
「私はね……晴馬が……」
その時、校舎の方から野球部がぞろぞろと走って出てくる。その一人とぶつかった薫が俺の方に倒れ込んだ。咄嗟に薫の肩を掴み、支える。野球部は校門の外へ走っていったのだが、別の足音がすぐそばで聞こえた。音の方を見ると、そこには涼の姿があった。俺と薫は同時に涼の名前を呼ぶ。すると、涼は走り去っていってしまった。何か誤解させたかもしれないと、涼を追いかけようとした。だが、薫がその場で過呼吸を起こしてしまう。多分……パニックになってしまったのだと思う。涼を追いかけたい気持ちを堪え、薫に寄り添う。(涼は、きっと言えば分かってくれる)と信じて。
「大丈夫か、落ち着いて呼吸するんだ」
薫の背中をさすり、俺は校舎の中へと薫を連れていく。保健室の先生に薫を任せて、俺はすぐに涼の走っていった方へと駆け出す。だが、駅の方に着いても涼の姿はない。俺は薫の様子を見るために学校へと戻った。その日、学校から帰宅後、俺は涼に「何か誤解させたかもしれない。だから話そう」とメッセージを入れる。でも……、涼から返事が返ってくることはなかった。毎日のようにスマホを確認する。何度見ても涼から返信は来ない。薫も俺と同じ状況だったようで「どうしよう」と物凄く焦っていた。夏祭り当日、待ち合わせ場所で待っていても来たのは俺と薫だけ。どれだけ待っても涼は来なかった。俺達は気分が乗らず、その場で解散。毎日、どうしたらいいんだと悩み焦るばかりだった。
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