覚悟

 二日間の休みを明けると、次のイベントは修学旅行。まずは、グループ決めからしないといけないのだが……。五人で組むグループのうち俺と涼と薫の三人は決まっていても、残り二人が決まっていない。

 (残り二人か……)

 悩んだ様子の涼と薫に、俺は男子二人を連れてきた。その二人の名前は高遠奨吾たかとおしょうご平海優人ひらうみまさと。中学の時、他校のサッカー部で試合をしたことがあった。その時に二人と出会い、たまたま高校も同じ、一年の時も同じクラスだった。グループに誘った理由はさほど仲が良いわけではないが、他のクラスメイトよりはマシだと思ったから。他にも理由はあるけど……。

 「こいつらと組めば決まりだな。薫と涼、それでいい?」

 そう聞くと、薫は涼を心配そうに見るが、涼は笑顔で「大丈夫」と答えた。グループのメンバーが決まったところで、次は修学旅行の三日目にある自由行動の観光地決め。その日は結局、行きたい場所ばかりで決められないまま話し合いは終わった。修学旅行当日までの約三週間のうち、何回か設けられていた話し合いの時間を使って、ようやく観光地を決めることができた。話し合いの中で、高遠と楽しげに話す涼の姿を見て、正直、嫉妬してしまっていた。そんな自分が情けなく感じる。告白すらできないくせに……嫉妬なんて。

 沖縄へ三泊四日の修学旅行、その前日の夜。自宅療養に入った母と二人きりで話していた。「明日から修学旅行ね。母さんの事は気にしないで楽しんできてね」と微笑む母。でも、俺は少し心配だった。

 「……うん。俺が居ない間は叔母さんが来てくれるんだよね?後、父さんも仕事を早めに切り上げてくるって。昼間もばあちゃんが居るんでしょ?」

 質問攻めの俺に、母は溜め息をつく。

 「そうよ。だから、何も心配せずに楽しんで」

 「でも、やっぱり心配だよ……。確かに修学旅行は楽しみだけど」

 母が眉間に皺を寄せて俺を見る。

 「その顔やめてよ、さすが元ヤンだ」

 「楽しんで帰ってこないと、あたし、晴真と口聞かんよ」

 「……わかったよ」

 きっと母なりの励まし方なんだと思う。昔から、何か辛いことがあっても笑顔だった母。そんな母だから余計に心配してしまう。突然、母が「そうだ!」と大きな声を出す。「突然、どうしたの」と聞くと、「妹から聞いたわよ~。晴真、学校に好きな子いるんだって?」と楽しそうに笑う。動揺を隠しきれず、思わず母から目を逸らした。母に伝えた犯人はきっと叔母さんだろう。思い返せば、昔から母も叔母さんも恋愛話が大好きで、執拗に「好きな子はいないの?」と聞かれていた気がする。その度に「いないよ」と言うのが面倒だった。

 「あれ?今回は本当にいるみたいね」

 母はニヤニヤと俺を見て、笑っている。話を逸らそうとしたが、質問攻めの母を止めることはできなかった。

 「……で、どんな子?可愛いの?それとも綺麗?」

 「母さんには関係ないだろ」

 「えぇ~、教えてくれたっていいじゃない。一人息子の好きな人くらいさ」

 母は俺の腕を指でつつく。「別にいるなんて言ってない」と言うと、母は不貞腐れたように「あっそう。……修学旅行で告白するの?」と言った。他の質問には真面目に答えるつもりはなかったが、その質問にだけは「……するつもりはない」と答えた。母は「どうして?好きなんでしょ?妹の話によれば、相手の子も晴真の事が好きみたいに見えるって」と目を見開く。

 「……たとえ、そうだとしても今は考えられない。高校三年の最後までは告白はしないよ」

 母が倒れて、病気が分かってから、心に決めていた。初めは両想いだと分かった時点で涼に告白するつもりでいた。でも、母が倒れてから将来の事を真剣に考えるようになった。いつまでも母が元気でいられるか、そんな先の未来なんてわからない。だから俺は、一人でも立派に生きていける人間になりたい。俺が目指している大学は生半可な気持ちでは入れない。大学に合格するまでは勉強に集中して、その後、……できるなら告白したいと思っている。

 「……そうなのね。まぁ、晴真が決めた事なら口出ししないわよ。でも、いつか晴真の好きな人、あたしに会わせてね」

 「……うん」

 母と話し終わると、俺は寝る準備を始める。でも、ベッドに寝転がり目を閉じても、中々

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