第4話

家族内のいじめや虐待は、親から子供だけでなく、子供が親に与える場合もある。親が高齢になれば、その可能性はさらに高くなる。親は良かれと思い子供を甘やかして育てるが、その子供が自己中心的な人間に育ってしまう。そしてその自己中心的な考え方が、周りの家族を巻き込んだ虐待の渦を作り上げていく。親は、甘やかして育てなければよかったと後悔しても、過去を修正することは不可能であり、死ぬまで息子や娘からのいじめや虐待は続くことになる。


第4回目の告白

父親の弟の叔父から、祖父は明治堅気の男だったと聞きました。働き者で、常に子供たちの事を考えていた。酒は飲まないし、タバコも止めた。それで、長男の父親には厳しかったそうです。ただし、父親が悪い事をしたときは手を挙げていたけど、それ以外は良い親だったらしい。兄弟の中は良く、兄弟喧嘩もほとんどなかった。母親については、密柑畑の叔母は、「昔から性格が歪んでいる。」と言った。姉は、父親のような職人風の男が大嫌い。だから、女々しい男を選んだら、母親そっくりの性格だった。旦那がアスペルガー症候群と分かったので、医師に今までの話を伝えてから「母親もアスペルガー症候群でしょうか?」と尋ねたら、医師からは「異常性格者でしょう。」と言われたらしい。

父方の祖父は、満州に出征して、戦後はシベリアに抑留1年半。復員してからは、少し仕事をするとしばらく寝込むようになりました。満足に働けない祖父の代わりに、祖母がドラム缶に海水を汲んで、それで塩を作って売っていたそうです。叔母たちは、成人してからは祖父と祖母にお金を送っていたけど、母親だけは一円も送らなかったそうです。昔から、「私の稼いだ金は、私だけのもの!」という考え方。前に叔母から聞いたけど、お金はほとんど持っていなかった祖父母が「無理やり家のリフォーム代を要求された。」と、泣きながら非道を訴えた。祖父母用にすごく狭い部屋や風呂場は増設したけど、ほとんどが両親のためのリフォームでした。それで、祖父母は全くお金が無くなりました。たまに病院に行きたいと頼むと、両親は「金を払うなら連れて行ってやる。」と言って車代を出させたようです。当然祖父母の年金も、全額両親が受け取っていました。祖父の癌がひどくなり最後に入院した時、叔母が数日遅れて病院に向かうと、母親に「お前が面倒を見ないから、こんな状態になった。人殺し、責任を取れ!」と、病室全体に響き渡る大声で怒鳴ったそうです。母親は周囲には、祖父は叔母が嫌いだった、私を頼りにしていつも腕枕で寝ていたと、嘘を言いふらしていました。

祖父が死んで一人になった祖母は、それからめっきり弱くなり、ある朝全裸で失禁して便もたらした姿で、近所のおばさんと私たちに発見されました。その時も母親は、「あいつら(叔母や叔父)のせいで、こうなったんだ。よく見ておけ。」と私に怒鳴り、汚れて場所の掃除を命令しました。ですが、高校2年生の私はどうしたらよいか分からず、また、全裸で汚物まみれの祖母を見たショックで、何もできませんでした。

祖母は、それから植物人間状態で5年間生きました。最後は、医師の勧めで流動食を減らし、栄養失調で自然死しました。糖尿病で高血圧だった祖母は、薬を信用していない母親の指示で、降圧剤はあまり飲んでいなかった。それで、脳卒中で倒れました。祖父母の死後、郵便局に残されていた二人の積み立てや定期預金は、全て母親が取り上げました。祖母が元気なころから、母親は祖母の通帳を取り上げようとして、いつも二人で喧嘩していました。実は、その通帳に溜まっていたお金は、母親の妹が毎月祖母に送っていたお金でした。だから、祖母は母親にだけは渡したくなかった。ある日祖母が、急に庭の桃の木を切り倒したのだけど、多分ストレス発散のためでしょう。

母親はいつも自分の事を、「私は昔から頭が良かった。でも家が貧乏だったので、泣く泣く進学を諦めた。」と言っていたけれど、母親が通っていた高校は三流以下のレベル。それを母親に言ったら、「うるさい。昔の事は忘れた。」と言って、また殴られました。あとは、金持ちの不動産屋の息子との縁談があったとか。これも嘘に決まっています。とにかく、お金には汚い母親でした。

姉も私も、成人して働き出してからは、10万円ちょっとの手取り給与から、毎月3万円ずつ母親に取り上げられていました。母親は、そのお金を全部自分の小遣いとして使っていた。叔母に注意されても、「育ててやったのだから、当たり前。あんな娘は、産まなければよかった。」との返事。叔母は呆れて何も言えなかったそうです。

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虐待と家族 アクセルデュッカー @AxelDuker

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