恋時計
@ramia294
第1話
手紙。
なかなか、出していただける機会が、なくなりました。
メールの方が、速く。
メールの方が、自由。
そこで、郵便屋さんの僕は考えました。
手紙にあって、メールに無いものをアピール。
手紙人気復活。
郵便屋さん人気、復活。
僕は、モテモテ!
m(_ _)m失礼しました。
夢のモテ期到来を目指し僕は、考えました。
デジタルにあって、アナログに無いものは、たくさんあります。
速く、正確。
何時でも送れて、字も綺麗。
安く、中には無料も。
考えると手紙の、メールに対する優位性は、ほとんど有りません。
しかし、僕は気づきました。
手紙には、心が。
(何処に?)
手紙には、思いが。
(見えないけど)
詰まっています。
封を開け、手に取り懐かしいあの人の文字は、温もりを運んでくれるはず。
ここをアピールして、僕のモテ期到来で……
m(_ _)m失礼しました。
手紙人気復活です。
僕は、何事も事実を大切にします。
実際、非接触型温度計を使い、手紙の温度を測定しました。
しかし、手紙の温度は、外気温と一緒。
温もり……。
運んでいませんでした。
こうなれば、手紙と一緒に使い捨てカイロを配達しましょう。
この案は、却下されました。
もちろん予算の関係。
そして、何より送り主様の望むお届け物ではないからです。
でも……。
手紙を受け取ると、温もりは、たしかに感じます。
何処から?
やはり、手紙が伝える温もりが、何処から来るのか調べるしかないようです。
便箋でしょうか?
文房具屋さんで、手に入る限りの便箋と封筒を買ってきました。
しかし、温度計は、外気温と同じと知らせてきます。
「きっと、インクだ」
僕は、突然閃きました。
そこで、インクの会社に出かけました。
残念。
そんなインクは存在しないと、その会社の回答です。
しかし、その発想は面白いと、人の思いを運ぶインクを製作してくれる事になりました。
担当のプロジェクトリーダー。
入社2年目の彼女。
期待の星。
その瞳は、キラキラ輝き、
髪は、黒インク。
唇は、赤インク。
シアンの制服が、鮮やかな彼女。
その日から、週にいちどの試作の手紙。
仕事熱心な彼女から届きます。
しかし、温度計の数字は、彼女の工夫に気づきません。
続く彼女の試行錯誤、
ひと月後の手応え。
届いた手紙。
明らかな温もりが。
封筒から取り出す手が急ぐ、
僕の温もり探し。
僕の胸に、温もり。
僕の胸は、温泉?源泉?
温泉旅館で、ひと儲け?
えっ!
あれ?
僕の胸?
手じゃないの?
会議。
インクの会社での会議。
開発の進捗状況確認、
僕の胸の温もりを見つけられない温度計の数字は、素知らぬふりが、得意。
報告する数字に、彼女は肩を落とす。
さすがにお疲れ気味か?
僕は、彼女を誘い出す。
せめて、美味しい物を食べて、元気を少し取り戻して下さい。
食事中、僕は仮説を彼女に、非公式報告。
つまり、雑談。
お喋り。
楽しい時間。
「手紙は、温もりを運ばない。温もりは、手紙の文字に変換され、読み手の中でだけ再生される。おそらく、どのようなインクで書かれた文字も手紙を送る相手を思う気持ちで書けば、温もりは再生される」
「私たちの研究は、無駄だと?」
「いいえ、そんな事はない。これを読んでほしい。実験です。君の事を思って書いた僕の手紙です」
彼女は、頬染める。
まだ、早い、実験の精度が下がる。
僕の思いを綴った手紙を読み始めた彼女の胸に、非接触型の測定器を向けた。
それは、僕が作った
胸の中の温もり上昇率を数値化して知らせてくれる恋度計。
今は、まだ恋愛数値だけしか計測出来ませんが、いつかは小さな温もりも……。
彼女に向けた恋度計の数値は、どんどん上昇。
君からの手紙を読む僕と同じ最高目盛りへ。
僕の彼女を思う気持ちと彼女が僕を思う気持ちは、同じ数値。
その夜、お月さまの祝福の元、ふたりは恋人に。
彼女の開発したインクが、ふたりの恋を生み出したかどうかは、まだわかりません。
でも、彼女からの手紙、僕からの手紙は、止水に降る羽根の様。
ふたりの胸の中の
もしあなたが、恋に胸を焦がしているなら、彼女の開発したインクを使って手紙を送る事をおすすめします。
あなたが綴る手紙に、その人の心が恋に落ちるその瞬間。
もちろん、お知らせいたします。
僕の新しく作った新製品が、その時をお知らせします。
彼女のインクと一緒に、ぜひお使い下さい。
(^^)vマタネ~。
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます