『聖地地球』

やましん(テンパー)

『聖地地球』


 『これは、フィクションです。』




 地球から発祥した生物のゆめは、地球に行くことである。


 そうして、地球に葬られることは、最大の名誉であった。


 しかし、地球に渡るのは、並大抵のことではない。


 地球訪問は、唯一、『銀河系宇宙旅行公社』が引き受けている。


 出発は、地球惑星基準年で、100年に一回しかない。


 今年は、その年に当たる。


 見送れば、100年後である。


 だから、やーまーしーんは、今回申し込むかどうか、迷っていた。


 彼らは、寿命が非常に長い。


 地球惑星基準年で、1000年は、生きられる。


 しかし、もちろん、申し込んだら行けるわけでもない。


 厳格な審査があり、さらに、抽選になるかもしれない。


 しかも、全資産を投げうたなければならない。


 不動産も含めてだ。


 つまり、どれ程豪華な自宅も、没収される。


 旅行に必要なだけのおこずかいは別として。


 どんな資産家でもそうだ。


 だから、たとえ帰ってこられても、ほぼ、無一文になってしまう。


 それでも、地球に行くことには意義がある。


 地球から帰ったら聖人さまになる。


 もし、地球で亡くなれば、神になる。


 もし、無事に帰れたら、政府から年金と、アパートが支給されることになるし、聖人さまとして、周囲からの支援が必ずあるから、まあ、生活はできる。


 つまり、あくどい商売などして、世間からは多少疎まれていても、地球から帰れば聖人さまとして敬われることになるから、ただ、そのために地球に行くなんて輩もなくはない。つまり、抜け道はある。例えば、親戚などに資産を移して、帰還後に一定の巨額な税金を政府に払えば、返してもらえる。


 ただし、その税額は、資産の85%に及ぶのだ。


 しかも、預けさきが、その時点で同意していることが前提になる。


 これが、問題である。約束していても、あてになんかならない。還さなくても違法にならない。


 還す方がどうかしている位いなのである。


 しかし、それでも、まだ、非常に甘いのだ。


 今の地球は、過酷な惑星である。


 残留放射線が高く、特別製の防護服が必要だ。


 大火山があちこちで、火を吹いているし、津波や地震など、巨大災害が頻発している。そもそも、どこから噴火するか分からなくなっている。


 大気圏への突入は、極めて危険である。


 太陽や地球自体から、イレギュラーな、猛烈な攻撃が来るから、宇宙船はなんとか耐えても、中身の生き物の大半は、生きて着陸できないかもしれない。やってみないと、分からない。


 古い都市などは、みな壊滅していて、町や村などは、ほとんど消滅している。


 唯一、残っているのが、『永遠の都』と呼ばれる、元 地球首都タルレジャであった。


 昔は、王国であり、島国だったが、現在は三本の巨大なタルレジャタワーが建つ丘の一帯だけが残り、あとは水没している。


 謎の女王さまと、幽霊たちが支配しているとされているが、まあ、それは、オカルトだろうと、大概は思われてもいるが、いかにも、聖地に相応しいから、一応、信じられていることになっている。


 近年、女王さまをみたと言うものは、誰もいない。


 

 ここには、人類が築いた、立派な空港設備がいまだにあり、神秘なる聖堂、宿泊施設、温泉、ホールに、ショッピングセンターもある。


 と、言われていた。


 というのも、あるのは帰還者の話だけで、写真の公開などは禁止されているからだ。


 やーまーしーんは、全財産を捧げて、やっと、渡航費だけは工面可能だった。


 しかし、滞在費用は最低限以下であり、ホテルには入れないから、野外テントになる。


 それでも、タルレジャタワーエリア内は、放射線防御がなされていて、問題はないらしい。


 共同の生活設備は備わっているとされる。


 渡航が許可されたら、写真や映像も見せてもらえるという。



   🙇🙇🙇🙇🙇🙇🙇🙇



 ついに、やーまーしーんは、渡航を申し込んだ。


 このまま、ここにいても、良いことは、なにもないからである。


 やーまーしーんの人生は、不運の固まりだった。ま、本人は、そう思うのだ。



    🙆🙆🙆🙆🙆🙆🙆🙆🙆🙆


 

 選考には漏れるに違いないと思っていたら、なんと、通過してしまった。抽選も、当たったのだ。なんだか、幸運が(幸運だと思うが。)まとめて来たみたいだった。


 そんな幸運は、生まれてはじめてであった。


 忙しい準備が始まる。


 やーまーしーんは、ネアンデルタール人である。


 なぜだか分からないが、ホモサピエンスよりもはるかに早く、外宇宙航海船を作り、やーまーしーんの一族は、地球から、まとめて脱出していたのである。


 火星の女王さまが、支援してくれた、という伝説もあったのである。


 ホモサピエンスは、攻撃的で妥協をしない。


 一部のネアンデルタール人は地球に残る選択をしたが、ホモサピエンスとの間の子孫以外は、早くに絶滅してしまった。


 しかし、ホモサピエンスは、現在、分かっている限り、もはや、その存在が確認されないてはいない。


 ただ、たまに、アウトロー外宇宙探検家からの、秘境での目撃報告があるが、オカルトの範囲からは出ていない。


 彼らの住みかは、プロシキマ・ケンタウリの周囲にある、人工惑星である。


 誰が作ったのか、わからないとされる。




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『聖地地球』 やましん(テンパー) @yamashin-2

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