第7話 僧侶も物理攻撃はする。
「遅い……遅すぎる。」
王の玉座の間にて、玉座に深く腰掛けている王とその側近であり司令官官長であるオーバはヒナタ村に送った兵士達を今か今かと待ち構えていた。
しかし遅い。例えカイが抵抗して暴れまわっているのだとしても遅すぎる。
10年も前の話とはいえ、仮にも勇者で特殊能力の加護持ちの男が相手だからと元剣士や元格闘家など優秀な人材で構成された第一部隊の兵を動員したというのに。
魔王城付近の手強いモンスターにも負けず劣らずの戦闘力を持つ人間が束となっているのだからすぐに戻ってくるだろうと何時間も前から同じ体勢でいるのだが……何故カイは来ないのだ?まさかこちらの想像もつかないような凶暴なモンスターが現れたとでもいうのか?
頭を抱えて悶々とし、もう自らヒナタ村へと押しかけてしまおうかなどと考えていると、門番に配属している兵士が一人が慌てた様子で王座の扉を開けた。
「司令官官長!ご報告いたします!」
「おお、待っていましたよ!兵とカイ殿が到着したのですね?」
「い、いえ……来たのは成人男性が一人と少年が一人でして……。」
門番の話によると、目つきの悪く背の高い猫背の男性とまだ10代前半ほどのつり目でモノクロの髪の子供が何やらインクを寄越して欲しいと言って引かないらしい。
そのあまりのしつこさに、短気なもう一人の門番が強めに男の腹を突っ張ったところ、男は『先に手を出したのはお前だからな』と一言言って勢いよく蹴りを入れたらしい。
鎧を着けてはいたのだが、不意打ちで、しかももろに腹に蹴りを受けてしまったことにより門番は気絶。どうすればいいのかわからなくなり官僚の方に話をしてくるからという名目でここまで走って逃げてきてしまったという。
「何ですかその野蛮人は!きっとこの国……いえ、世界を脅かす存在に違いありません!盗賊か暗殺者かは知りませんが、きっと低俗な役職の方に間違いはないでしょう。この私が直々に出向いて懲らしめてやらねば……この王城を守るのも私、司令官官長の仕事ですから。」
「流石は元『杖でモンスターを殴る僧侶』で有名なオーバ司令官官長です!とても頼もしい!しかし気を付けてください、奴はおそらく特殊能力の加護持ちのようですから。多分人を引っ張るようなものだとは思うんですけど……。」
「え?」
「え?」
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