第6話 世界の制服
「南雲くん、今日のはどういうこと!?」
放課後、僕は琴吹さんに呼び出されていた。
腰に手を当ててムッとした顔で迫ってくる。
「今日ってのは、お昼のあれ?」
「そうです!」
長瀬に呼び出されて、タイマンすることになったが結果は僕の勝利で終わった。もちろんその騒ぎは学校中で噂になって先生たちにも知られている。
先生たちから色々と状況を聞かれて今さっき解放された所だ。
琴吹さんは険しい表情のまま言葉を続ける。
「なんで長瀬くんとあんなことしてるんですか!」
「別に僕から仕掛けたわけじゃなくて、あれは長瀬が」
「言い訳はいらないです」
「……すみません」
「呼び出されたというのは知っています。でもそんな場所になぜ行っちゃうんですか。先生に相談したり、私を頼ってくれてもよかったじゃないですか」
先生に相談すればその場は解決するかもしれないが、その後に何されるかわからない。だから自力で解決する手段を選んだ。
長瀬と話し合えばなんとかなると思っていた。
結果は思わぬ方向に傾いたけど後悔はしていない。
それに、
「琴吹さんに相談したからと言って、別に解決するわけじゃ」
「そ、そうですけど! 私一人じゃ解決できないかもしれないですけど、南雲くんと二人で考えれば最善の解決策が見つかった可能性だってあると思います」
琴吹さんは僕の目をしっかりと見据えて言った。
確かに、琴吹さんに相談くらいはしても良かったかもしれない。
「わかった、次からそうさせてもらうよ」
「約束ですからね。……それで、どこをケガしたんですか」
「ケガ?」
「だって長瀬くんにやられたんでしょ? どこかケガをしててもおかしくないはずです」
あれ、お昼は僕の勝利で幕を閉じたはずだが。
「もしかして長瀬が勝ったって話になってる?」
「え、違うんですか」
きょとんととした顔で聞き返した琴吹さん。
やっぱり僕が負けたという形で噂が広まっているのだろうか。
「あの、実は僕が勝ったんだけど」
「嘘ですよね?」
「いやほら、ケガもないしさ本当のことだよ。それに僕もバカじゃない、さすがに無策で挑むわけじゃないから」
勝算があったわけじゃないが、内心なんとかなると思って屋上に行ったのは本当だ。まさかあそこまで運動神経向上しているとは思わなかったけど。
じろじろと琴吹さんは僕の体を見回してから一つ息を吐いた。
「今回うまくいっても次も成功するかわからないです。なのでこういう危ないことは止めて欲しいです」
「心配してくれてありがとう。また長瀬がなんかしてきた時には琴吹さんを頼るから」
「はい、お願いします」
こうして僕は琴吹さんと別れて帰路に着く。
◇
下駄箱で靴に履き替え、正門を通って学校を出ようとする。
とその時、正門の前で制服の上に黒いコートを身に纏っている女の子を見つけた。
そわそわとした様子でチラチラと校舎の方に視線を送っている。
彼氏でも待っているのだろうが、その相手は羨ましいな。
ショートカットでメガネをかけている彼女は傍目からでもかなり可愛く、大人しそうな雰囲気がある。
横目で彼女の様子を見ながら通り過ぎていく。そこで僕は十人の女の子とキスをするという話を思い出した。
……キスするならああいう可愛い子がいいよな。
名残惜しさもありつつ、もう一度学校の方へと振り返る。……するとそこにはさっきの女の子がある程度の距離を取りつつ後ろをついてきていた。
たまたまだろうけど、待ち人は来なかったのだろうか。
少し歩くペースを速めて駅の方向へと歩いて行く。
自分の中でかなり引き離した感覚がある。これでついてきていたら、僕に何か用がある可能性は高い。
ピタッと立ち止まって僕は体ごとゆっくりと反転させた。
「…………」
正面へと向き直る。
いた
え、まだいたんだけど。
どういうことだ、僕のことが好きでストーキングしているのか、何かしらの恨みを持って後をつけてるのか。
どっちの確率が高いか、それは後者だろう。
まあとにかく話は聞いた方がいいかもしれない。いきなり背後からナイフでグサッと刺されてからじゃ遅いからな。
「あの、僕に何か用かな」
女の子はさっきの落ち着いた雰囲気とは打って変わり、強気の目をしている。力が入っているのか、動きが硬い。
一歩ずつ僕の方へと近づいて小さく息を吸ってから声をあげる。
「ワタシを弟子にしてください!」
「……弟子?」
「はい、弟子です」
考えもしなかった三つ目の選択肢。
弟子になりたくてずっとストーカー紛いのことしていたのだろうか。
「長瀬春斗を倒した男、ですよね!? あの時に何やら魔法的な超人的な技を使ってましたけど、あれをワタシにも教えて欲しいんです」
「いや、待って。……あのもしかして屋上に」
「いましたよ。だから長瀬吹っ飛ばした時、ワタシびびっと来たんです。この人となら世界を征服できるかもしれないって」
「ちょっと待って。世界を征服? なに言ってんの」
そう言うと、少し不満げな表情の彼女。
あっと何か思いついたのか、手を叩いて口を開く。
「ワタシを弟子にするのが嫌なら、……恋人なんてどうですか」
現実で無双してる強い僕なら好きになってくれますか?~陰キャだった僕が魔眼を手に入れたら、ギャルも清楚も天然も僕を好きになってしまうようです~ カニクウ @Tyazu
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