不信の悲しみ

 思ったとおりだ。

 彼は私の話を信じない。

 そりゃあそうだ、

 理解するだけでも難しいっていうのに。

 彼は私に質問をすればするほど、

 難しい顔になっていく。

 彼の目の前にはゾンビがいる。

 腐ってはいないが、生ける死体だ。

 私は何もかもが同時にあり、

 そして見る時々によって状態が変わる。

 そう、光のように。

 同時に存在し得ない、

 同時に同じ場所へ存在してはならない、

 そんな相反する性質を、

 私は両方持ち合わせているから。


 彼は私のことを信じなかったが、

 残酷なことにこれは事実。

 受け入れるしかないとわかっていたとしても、

 それを感じることは不可能にに近い。

『ある』と[[ない]]、【死亡】と{生存}、

 私にもどうやってこうなったのかわからない。

 そんなわからない私に、

 彼は言う。

「お前は昔からそうだな。」

 と。

「いつも不可解な状態でいる。」

 と。

 そんなことを言ってくれた。

 わからないことさえわかってくれれば、

 私は満足だ。


 これからも私は《生き》続ける。

〔死〕はとうに諦めて帰って行った。

 さて、


 これから何をしようか。

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塵の記憶 アラママス @kakugogo

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