公衆電話

 緑の公衆電話に

 10円玉を一つ入れ

 記憶から手繰り寄せた

 その番号を打つ。

 その呼び出し音が

 あの人に届くのを願っていた。

 掛けている先は

 元の現場の上司で

 彼はどこへも行かずに

 真実を知ることになる。


 彼は狂ったように泣いている

 私の生存を知り

 彼の旧友の生命はまだ残る

 粉塵を纏いながら。

 彼は一つ提案をした

 バーで待ち合わせをするという

 それを受け入れて

 支度をしています。


 普段あったものが

 突然になくなり

 二度とないと思い込んだ

 その時間は長い。

 1ヶ月が12倍ほどに

 感じるような絶望と

 すがるものが無い寂しさで

 必要とされるのです。


 緑の公衆電話が

 もしなかったならば

 二人はもう二度と

 会う事はなかったでしょう。

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