第21回 介護疲れなどの殺人や心中「8日に1件」~介護から逃げていい~
いまいち正月気分が抜け切れない今日この頃ですが、みなさま、いかがお過ごしでしょうか。
有給などを使って、新年は今日から出勤という方もいらっしゃるかもしれません。
規則正しい生活のルーティンは生産性に影響します。まだマッタリされている方は、気を引き締めなければいけませんね(自戒)。
さて、今回も小説『パパラッチ』に関連する話をしていこうと思います。
今回はシリアスな内容です。
2章「報道のジレンマ」は、介護を扱っています。
「排泄物を投げつける」という表現が出てきますが、これは介護をされている方に取材をしていて、実際に聞いた話です。
https://kakuyomu.jp/works/16817330667813140300/episodes/16817330667815418528
先月、『介護疲れなどの殺人や心中「8日に1件」』という記事を読んで、悲しい気持ちになりました。
https://mainichi.jp/articles/20231209/k00/00m/040/245000c
(毎日新聞)
介護については社会問題ですし、日本はますます超高齢化していくので、私もたびたび取材をしています。
役立つ内容を発信しているのですが、直近でそれが必要な「介護者」は時間も心の余裕もなくて、情報が届きづらいと感じます。
ですので、親も自分も元気なうちに、親が要介護になった場合のシミュレーションをしておくことは有益です。
お住いの役所や地域包括支援センターに話を聞いて、準備のために情報を入れておくことは、介護系の有識者が口をそろえて勧める行為です。
先ほどの記事のような問題に発展するのは、介護者が疲弊することが原因です。
本人が施設に入るのを嫌がるから、自分は子供(配偶者)だから責任をもって世話をしなきゃいけない。
そんな責任感から、24時間体制の介護生活が始まります。
そして限界が来ると、心中などの悲劇が起きてしまうのです。
だから私が担当する週刊誌では、少なくてもデイサービスは使おう、慣れたらショートステイも利用しよう。
どうしても要介護者が身内以外の手を嫌がるなら、こんな助成金やサービスもあるんだよ。
そんな特集ばかりしていました。
ところが。
「お互い大人なんだから、面倒をみる必要はない」
そう断言する介護の専門家がいました。
家族がせっせと世話を焼くから、居心地が良くて、本人はヘルパーさんを拒否しているのかもしれない。
上げ全据え膳でなんでも家族がしてしまうから、本人の要求がエスカレートする。
同じクオリティをヘルパーさんに求めるから、それをしないヘルパーさんに不満を抱いて拒否してしまう(家族に依存する)。
要介護者の要求はますます高くなり、家族は疲弊する。
その専門家は、「要介護者を困らせてもいい」と話すのです。
目から鱗が落ちました。
何人もの専門家に話を聞いてきましたが、こういう意見は初耳でした。
先回りして欲求を満たしてあげることが優しさではない。
本人ができることを増やしてあげることが本当の介護である。
手を伸ばせば届くティッシュを取るときでさえ、呼び出されることがあったとしたら。
それはもしかすると、過剰な介護が原因の1つかもしれない。
要介護者を大切にすることと、甘やかせることは違うのです。
「私は動けなくてこんなにつらいのよ! 呼んだらすぐに来なさいよ!」
そんな要求が苦痛になったら、自分のタイミングで要介護者から離れてしまっていい、とも専門家は言っていました。
頼る人がいなくなれば、自分で何とかしようとするはず。
1人でできなければ、結局、ヘルパーさんに頼るしかない。
助けてくれるヘルパーさんにも、いままでより感謝の気持ちが芽生えるかもしれない。
介護者だって自分の人生があるのです。
自分の生活を大切にしていいのです。
超高齢化に向けて、要介護者は増えていくはずです。
介護関連の悲劇が少なくなりますように――。
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