第19回 私が芸能記者を辞めたワケ~小料理屋にも特ダネは潜んでる~

あけましておめでとうございます。

今年もよろしくお願い致します。


昨年の今頃は退院したばかりで動けなかったので、健康は素晴らしいと、ダラダラお酒を飲みながら幸せを噛みしめております。


さて、今回も小説『パパラッチ』に関連する裏話をしていこうと思います。


こちらのページで↓主人公が小料理店で、スクープを掴むシーンがあります。これも私の実体験です。

https://kakuyomu.jp/works/16817330667813140300/episodes/16817330667815259873


以前、芸能人が通う店として有名な高級イタリアンは、経費をかけるのが怖くて行けないと書きました。

ですので、私もこの主人公と同じように、主に地域密着の安い小料理店に通っていました。


店は小さいし、古いし、お世辞にも綺麗な店ではありません。

だけど、地元の人たちに長く愛されている店。

こういう店にも、案外、情報が集まります。


実際、近所に住んでいる芸能人の家をいくつも教えてもらえましたし(俳優の谷原章介さんは、いいパパだね、と褒め言葉しかありませんでした)、この店の紹介で政治家の小沢一郎さんのパーティーにも参加することができました。


そして、とある大女優の恋愛スクープをキャッチしたのも、この店でした。

私の数少ない功績です。


芸能人が通うというクラブやバーにも挑戦したのですが、私自身が地味なので、どうしても浮いてしまいます。


なので、地元密着型の小さなお店の常連になる戦法を取っていたのですが、若い客が少ないので、けっこう可愛がってもらえました。


すると、記者だと言わずに情報を引き出そうとしている自分に、罪悪感が芽生えます。

小説でも、こんなシーンがあります。


「私たちにとって、出禁の店が増えるのは、勲章みたいなものよ」

 それは、スクープを取ってきた数だ。

 それと同時に、誰かを信用させて、裏切ってきた数でもある。


そうなのです。

記者だと言わずに話してくれたことを記事にしたら、私が情報源だとすぐにバレます。

だって、その店での部外者は、私だけだから。


私は、「経費をガンガン使っていいからスクープをジャンジャン取ってこい!」という編集者の言うことを聞けない小心者で。

料理店の常連客をだまし続ける罪悪感と、スクープを取らなきゃというプレッシャーから鬱気味になり。


――芸能記者を辞めました。


辞めたいと言った時、担当編集者にこう吐き捨てられました。

「いいけど、どこに行っても上手くいくはずがないよ」


バッサリです。

2年半も心身をすり減らし、24時間体制で頑張ってきたのに、冷たいですね。

……編集者さん、ヒトコト言っていいですか。


私、今の仕事になってから、チョー幸せです!

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