第22話 まりさんの引っ越しと僕

僕はすぐにSNSでまりさんが道玄坂のホテルにいる情報を一気にアップする。


ツイはすぐに1万いいねを達成。


星野まりが道玄坂のホテルにいると言うのは衝撃的な内容だ。

信じるものも信じないものもいる。

それでも信じるだけの材料をアップしているつもりだ。


以前のトイレでの事件を動画で録画していたがそれは犯人に奪われたことになっていた。

しかし僕はあの時にすでにPCに動画を転送していたのだ。

そのストックもSNSであげた。


それと同時にまりさんの日付入りの動画もアップした。まりさんがこれから向かう先であるホテルを本人自ら言った動画だ。


「わーー!すごい!いっぱい人がいる」

まりはホテルのベランダから外を眺めている。


「やべー!道玄坂のホテルにマジで星野まりいるじゃん」

「星野まりがホテルでえっちなことしてるの?」

「まりちゃーん、俺もそこに入れてー」

野次馬がどんどん増えて行く。


野次馬はアイドルファンだけでなく、若者、さらにはマスコミにまで拡がっている。


夕方のニュースはライブでこの状況を放送する勢いだ。


犯人たちはそうと知らずに道玄坂のパーキングにワンボックスカーを止める。


「おい、ババア、おまえは星野まりと交換だ。外を出歩くが少しでもしゃべってみろ、殺すからな。お前も星野まりも」


「わかりました」

ガムテープを剥がされたママは従うのみだった。


「おい、今日ってなんかイベントでもあるのか?道玄坂がやけに人でごった返しだな」


「いや、なにも知らないです。道玄坂だし、変な輩が集まってなんかしてるんすかね?」


「鬱陶しいけど掻き分けて行くか。おい、ババアしゃべんなよ」


犯人たちは星野まりがいるホテルに駐車場から向かい始めた。


「おい、あれ、あいつじゃね?」

「あいつらやばい奴らじゃん」

「マジで来た」


野次馬たちは犯人たちの顔を見るや否やざわつきはじめた。


「なんか俺たち見られてるのか?」

「なんかそう見たいですね」


悪いことをしている犯人たちにとっては視線が痛いほど突き刺さる。


「あいつら捕まえろー!」

野次馬の1人が大声を発すると同時に周りの人間が一斉に犯人たちに襲いかかる。


「お、おい!なんだ!」

「ちょ、やめろ!やめろ!」


誰がもってきたのかわからないがひもで手足を結ばれていく犯人たち。


「どういうことだ!」

犯人の1人がいまなおいきり立っている。


「星野まりのファンとしてお前は許さない。これだよ!」


犯人たちの目の前にトイレ事件の動画と星野まりがホテルにいると動画が流された。


がくっ


犯人たちはうなだれて呆然としていた。


「みんなー!ありがとう!ママりん、だいじょーぶー?」


「はーい、まりちゃん助けてくれてありがとう」


「マネージャーのおかげだよー!みんなで警察いこー!捕まえてくれたみんな、警察来たらその人たち突き出してねー」


この映像は全国に生放送された。

犯人たちはもう立ち直れないだろう。


………………………


この事件の後、ママと楓はすぐに自宅に帰った。

そしてこの事件を含めて今後のことをどうするかまりさんと相談中だ。


「イチローくん、助けてくれてありがとね。あんな良い手があったなんてびっくりだよ」


「まりさんの知名度のおかげですよ。ところでここも危険なので引越した方がよさそうですね」


「それについては考えがあるの。私だけならまだいいけど、イチローくんやママりんや他の人たちに迷惑かけたくないからセキュリティのいいところに引っ越そうかなーって」


「あ、でもぼく、引っ越しするようなお金ないですし、セキュリティのいい賃貸なんか家賃が高くて住めないです」



「いいのいいの、助けてくれたお礼に私が出すから」


「でも悪い気が………」


「いい子にして私の言うことなんでも聞いてくれる?」


「ルール1があるので僕には拒否権がないです。言うこと聞きます」


「いい子いい子。では引っ越し先は社長に相談しておくね。アイドルをたくさん抱えている事務所だからかなりの有料物件抱えてるはずだしね」



………………



「むり!むりです!こんなマンション」


目の前には大理石のエントランス。

車も人も入居者しか入らないような仕組みになっている。

テレビでしか見たことのないようなコンシェルジュも入り口に座っている。


スパ、ジム完備の家賃がいったいいくらなんだ物件。



「まりさん、こんなの無理です」


「ここが1番いい物件なの。前からここに住めって言われてたの断ってたの。でも仕方ないよね。あんなことあったしね。ここは有名アイドルや俳優だけでなくて前途有望なアイドルや俳優も所属事務所の社長案件で住まわされることもあるマンションだよ」


「僕もいくらか払おうと思っていましたが無理ですよ」


「そりゃ、むりだね。イチローくんには。ここの家賃月に100万だしね」


「ひゃ、ひゃくまん!?」


「心配しないでね。私の月収500万あるから問題ないよん」


「えー!?500万!?」


「ということで、まずはお隣さんに引越しの挨拶へ行きましょう」


ピンポーン


ガチャ


「隣に引っ越してきました。星野まりです。

ご挨拶に伺いました」


「あら、まりちゃん。ここに越してきたの?

ご丁寧にありがとうね。またドラマ一緒になるといいね」


現れたのはあの朝ドラの大女優だ。

ここまでくるとぼくはもうびっくりはしない。


「じゃあ、次は反対側、イチローくんが挨拶してね」


「はい。してみます」


ピンポーン、ガチャ


「今日からここに引っ越してきました鈴木イチローです。ご挨拶にきました。よろしくお願いします」


僕は初めての挨拶に緊張しながらも精一杯頭を下げて対応した。


そして頭を上げた。


「ええ!!小田切!?」


目の前には小田切奈央が立っていた。


そしてここから星野まり、小田切奈央、そして僕の三角関係が始まったのだ。



……………1章・完………………


ここまでお読みいただいた皆さん、

本当にありがとうございました。


少し充電期間を置いてから活動しようと思います(・∀・)






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匂いを嗅がせたい『まりさん』と匂いを嗅いだら気を失う『ぼく』 Rui ji 6 @Analogy6ofIQ114

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