ガーディアン戦決着

 ※何回書いても納得できないのでこの話は後で好きなだけ時間かけて加筆します



 少なくとも膝裏に魔力の鎧の感触が無かったということは、オレが今一番目指すべきことが確定した。

 とはいえ相手は、【冒険王】。簡単にできるはずもない。

 スキル外スキルの最高の使い手お手本が目の前に居るんだ、学べるものは全て学んでいくぞ。


 まず対面する上で徹底したのは剣のリーチを保つことだ。

 スキル外スキルの強化のために無手で戦う【冒険王】と比べて唯一勝るところがあるとしたらリーチだ。

【魔剣製生】で生み出されたオレの魔力だけで構成された剣はスキル外スキルでの強化にも適正が高い。

 例え砕かれても即座に生成できるのもいい。

 魔力で全力で強化した突きが拳に負けて砕けるなんて嘘みたいな現象が起きまくる現状、いくらでも替えがきく武器というのは本当に助かる。

 だが実力差というものは明確にあるもので、そう簡単には埋まらない。


「くっ、そ!」


 避けそこねた一撃で左耳が吹き飛んだ気がする。

 頭ということで出血も激しいし平衡感覚が馬鹿になる前に回復しなくてはならないが上手く回復できるほどの距離を取ることが出来ない。

 続くラッシュに無理な高速反応を続けているとクラクラしてきた。

 その隙を【冒険王】は見逃さなかった。

 首への一撃だとフェイントをかけオレの防御態勢を誘発したと思ったら本命の左腕が腹に突き刺さる。

 咄嗟に魔力を腹に回して少しでも損傷を減らそうとしたが、鋭く研ぎ澄まされた一撃はあっさりと腹を貫いた。


「がっ、……、ひゅっ」


 マジで死ぬほど痛い。

 この旧東京1番ダンジョンに潜り始めて二度目の腹への大穴に一瞬意識が飛びかけるが、動きを止めたら負けると腹に腕が突き刺さったまま剣をなんとか振るう。

 あっさりとバックステップで離れてくれたが、さり際にオマケとばかりに腹の中を滅茶苦茶にしてくれたのでマジでダンジョンアウト目前である。

 もうなりふり構ってられないのでその場で実体化させたポーションをぶっかけるが、その隙に再度距離を詰めてきた【冒険王】の拳を受けきれない。

 顔の前に掲げた剣もまた砕かれ、目と鼻の先まで迫った拳に死にものぐるいで魔力をかき集めた。

 今まで通りの障壁じゃ駄目だ、貫かれて終わりになる。

 ではどうすればいい?

 敗北が目前に迫ったそのコンマ数秒の間になんとか生き残る術はないのか思考が高速回転する。


 硬さでどうにか出来ないならもう受け流すしかないだろ。


 ぶっつけ本番、斜めに逸らすように障壁を成形する。

 砕け散りながらも本懐を遂げた障壁と、逸れた腕のまま背を向けるような体勢になった【冒険王】。

 今までにない隙に後先考えずに【魔剣製生】からの【盛者の理】を使った。久しく使っていなかったスキルに瞬間的な全能感が滾る。


「お返し」


 今できる最高の一撃をここで。


 膝裏から掬い上げるように斬り上げた剣が【冒険王】の身体強化を貫く。

 失った片足にバランスを崩した【冒険王】。


【小夜啼鳥】もかつてのパーティメンバーもいない、【狂化】状態の【冒険王】に部位欠損からの回復手段はないだろう。

 ここまで有利な条件をお膳立て出来たならあとはもう、こちらの一方的な攻戦で締めだ。

 数秒したらデメリットの弱体化が始まるが、その間逃げ続ける。【盛者の理】だけならそこまで弱体化期間も長くないので欠損した【冒険王】から逃げることくらい出来た。


 その後、片足を失っても尚巧みな魔力操作によって決定打を防がれつつも、ヒットアンドアウェイと手数の差で押し切った。

 あまりに耐久が高いのとガードが的確すぎて無駄に時間がかかったが、それでもアイテムでの回復もしやすくなったし片足故に踏ん張りの効かないインファイターに負ける余地は無かった。


「倒し、た……?」


 眼の前で消える【冒険王】に、ついにガーディアンを倒したのだとようやく実感が湧いた。

 3体居たガーディアンの内オレがまともに倒したと言えるのは【冒険王】のみだが、それでも勝ちは勝ちだ。

 ついにやり遂げた……!


「やっ、たー!!!」


 あんな無理ゲーだったのに、勝てた!?

 S級になってからこれ程のスリルも緊張も感じたことは無かった。まだ初心者だった頃のような高揚感を感じたのはどれ程ぶりだったか。

 今心臓が凄いバクバクと五月蝿い。

 やり遂げたんだと喜ぶオレの眼の前で、ダンジョンコアが点滅する。


 これほどのサイズのダンジョンコアが砕けるのは始めてだ。

 視聴者も気になるだろうし、その最期を見届けようと興奮も冷めやらぬままではあったが視線を向ける。


「ん……?」


 いつまで経ってもダンジョンコアが砕けない。

 むしろ、ガーディアンを生成するときのような点滅が止まらない。


 そして、眼の前に新たな人型が生成された。


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