配信11回目
最悪の空気のまま終った作戦会議の後で、あの人まじで
本人はこれがないと勝てないという【神託】ですと笑っていたが本当にそうなのか確かめる術がないのでこちらからするとひたすら胡散臭い笑みにしか見えなかった。
【約束の指輪】がもし本当に効果があった場合、配信中に挙動がおかしい事に絶対にバレる。
手袋などで見た目だけ指輪を隠してもオレのダメージを肩代わりして傷付くなんて【約束の指輪】の逸話知名度からして即座にバレる事確定だ。
なので、キチンと正当な理由付けをして民意はこちらが丸め込みますのでと笑うヤベーやつから押し付けられた指輪は、ごく普通の銀の指輪のはずなのに何故か過去一番の呪いの装備のようだった。
今まで見た目も名前も禍々しいネームドの魂使用装備ばかり使ってきたけど、流石に死に別れた恋人達の指輪を盗掘して装備することになるなんて想定していなかった。(しかも約束の指輪の特性上左手の薬指にしか装備できない。マジで辛いから本気で勘弁してくれ)
盗掘と装備の理由説明のために国の偉い人を呼んできて、オレの方で説明用の配信開始して眼の前で事情説明させるというまさかの荒業。
ちゃんねる始まって以来初のコラボ配信()に、一人称視点故に映らないオレの目は間違いなく死んでいた。
泥被り担当の偉い人は政治家なだけあって民衆の感情に訴えかけるようなスピーチに加え論点を的確にずらして最終的に旧東京1番ダンジョンへのヘイトを煽る話術は見事なものだった。
ダンジョン社会じゃなかったら詐欺師としてやっていけるな、なんて今も詐欺師みたいなものか、がはは。
全ての泥をかぶってくれる役として呼ばれた偉い人は、説明が終わったら何やら水鳥さんとにこやかに話していたので信者の方だったのだろう。
権力が与えられてはいけないところに与えられている……。
将来がますます暗くなっていくな……。
そしてついに正式なリベンジの日が来た。さっさと1000階層まで行き、首の骨を折りそうになりながらも魔王を片付けた。
配信タイトルはシンプルに「旧東京1番ダンジョン
設定はいつもの一人称視点、外見表示オフ、視界不良解消オン、残酷表現オフして配信開始。事前に今日
水鳥さんと偉い人による事前のプロパガンダにより全体的にコメント欄もガーディアンを倒して解放してあげて!といった論調になっている。
サクラも居るんだろうなぁ……。
最近どんなことでも裏を考えるようになってしまったの本当に嫌だ。
「前回も見てくださっている方も今回からの方もこんにちは、塩漬けちゃんねるです。前回からそれなりに期間が開きましたがそれもそのはず、今回は国から正式に緊急依頼という形で依頼が来ました」
コメント欄で〜〜さんの配信で見た、といったコメントが流れる。
S級ほぼ総動員してくるなんて定期の強制依頼での草刈り依頼以外でほぼほぼないから印象にも残るだろう。
「前回戦ったガーディアンの姿がとても見覚えのある姿形で驚いた方も多いのではないでしょうか。1000層ボスの情報もあって、ショックを受けた方もいるかとお思います。直前の説明でもあったように遺品の【約束の指輪】を利用するというこう……なんというか、いえ、そういう作戦ですので今回は【約束の指輪】を持ち込んでいます」
オレは弱い……。
約束の指輪を視界に入れたが、やはり感じる禍々しさ。
なんかホラー映画冒頭でバーベキューに来たパリピが近くの祠崩してゴミ捨てて帰った時くらいの死亡フラグを感じる。このあと絶対に死ぬんだろうなーくらいのあの空気感。マジでこの指輪外したい。
ここからはもうコメント欄を直視せずに行く。
「前回のガーディアン戦では一方的にボコボコにされて勝ち目がまるで無い状態でした。今回はより入念に草刈りをして、アイテムを準備して万全の体制で挑みます」
さて、本当に再戦だ。
前回の時開けた穴はすっかり修復されきっている。もう一度穴をぶち開ける為に魔力を回してスキル外スキルで攻撃。
「二度目まして」
心なしか前回よりも発光が控えめになった気がする。もしそうなら草刈りの効果が出たということだろう。チカチカと点滅したダンジョンコアは再びオレの前にガーディアンを生み出した。
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