【小夜啼鳥】

【王眼】で確認したところ、全ガーディアンのステータスが魔力以外3段階ほど落ちている。

 これが本気の草刈りの力……!

 一人でやっていた時と比べると草刈りの成果が大違いだ。今回依頼を受けてくれたS級の人達がいなければここまで大きな変化は望めなかっただろう。


 必ず最後に感謝の念を伝えようと誓って意識を戦闘に戻す。まずは最優先事項、【小夜啼鳥】の始末からだ。

【約束の指輪】が通じないと全てが無に帰すので、早めに即死しない程度の一撃を貰って確かめたい。


「【狂化】」


 挨拶代わりの【狂化】で【冒険王】の準備が完了する。

 これ本当にズルいんだよな。オレ今普通のスキル何が欲しいって聞かれたら【鑑定】と【リターン】抜いたら【狂化】が一番欲しい。多分冒険王さんはオレと戦闘スタイルスキル外スキル多用が似ていたんだろうなと思う。

 完全制覇ダンジョンクリア発見の経緯とか明らかに普段からスキル外スキル使い込んでなきゃ見つけられないし。

 なんて思いながらこちらに突撃してくる【冒険王】を完全に避けず右手に一撃をあえて貰う。

 魔王の後から【魔剣製生】をしていない無手状態は継続している。今回の主なダメージソースは直接攻撃ではないからな。


「、【約束の指輪】、効果有りですね」


 草刈りのステータスダウンが入っても【狂化】によって一番影響が少ない【冒険王】の一撃を食らっていれば間違いなく食らった部位に欠損判定がでるだろうが無傷だった。勿論攻撃自体は食らったので腕は思いっきり弾かれたので、ダメージだけを肩代わりしている状態なのだろう。

 代わりに【勇者】の右手にヒビが入る。

 食らった攻撃に対してモンスターの耐久も高いとああなるのか。


「【ヒール】」


 まぁその程度の傷、【小夜啼鳥】によって秒で回復されてしまったが。

 普通ならもっとグレードの高い回復じゃないとダメそうに見えたんだがな、回復について高い補正値を持つ【小夜啼鳥】にとっては超初級の【ヒール】程度で問題無いのだろう。

 これはクールタイム問題に持ち込むのは難しそうだ。


 でも、相手から攻撃を食らわない状況が保証された今こそ【小夜啼鳥】を攻めるべきだ。

 ダメージこそ食らわないものの衝撃は来るので結局【冒険王】の直撃は貰っては駄目なのは変わらないし、恐らく【勇者】の補助魔法による足止めも効くだろう。

 あれ……?圧倒的有利なはずなのにそこまで有利になった気がしないなおかしいな。


 一人倒せばそれだけ楽になる。ピークは今だと言い聞かせて魔力で強化して駆け出した。

【冒険王】の動きを抑止するために【フレンドリーファイア】を使用しながら真っ直ぐ【小夜啼鳥】に向かって走る。

 ワンチャンオレじゃなくて【小夜啼鳥】に誤爆してくれればいいくらいの気持ちだが、とにかく直線上に吹き飛ばされたら【小夜啼鳥】のポジションだけは忘れずに走る。


『【エリア拡張】、【エンチャント】、【アースウォール】』


 分断の為に使われた【アースウォール】によって真下から生えてくる土壁にあえて飛び乗る。上に向かって伸びる壁のエネルギーを借りて跳躍、【勇者】を飛び越えて【小夜啼鳥】の前に。

 一拍挟んだせいで【冒険王】に追いつかれたがその大きく振りかざしたグーパン、滅茶苦茶怖いが自ら顔面で受けにいく。

 一人称視点だから配信で見たら多分死ぬほど怖い絵面だと思う。

 当然頭から吹き飛ばされるが直接的なダメージは肩代わりだ。叩きつけられる勢いで床にめり込むかと思ったし実際ちょっと骨がイッた気がしなくもない。

 ダメージの肩代わりで顔面にヒビが入った【勇者】に、【小夜啼鳥】が杖を向ける。


『【ハイヒール】』

「隙あり」


 オレ自身は床に倒れ伏したまま体勢を戻せてもないし、真横に【冒険王】が居るからって距離を取らずに回復とはまぁ、舐められたものだ。まぁ本来のパーティからそれぞれ抜き取る形で生み出されたガーディアンだからこそこういった行動の歪みが出るんだろうな。

 倒れたまま背筋に無理を言わせて無理矢理両手で倒立するように伸び上がると、両足で【小夜啼鳥】の首を挟む形で絡めた。

 そのまま無防備な頭を床に叩きつけるように体勢を崩して、最終的にオレの背面に乗り上げるように引き倒す。そして丁度振り下ろされる【冒険王】の踵落としをオレの代わりに受けてもらった。

 踵落としと【小夜啼鳥】で出来たサンドイッチの一番下になったオレにも背中越しに腹が床まで貫通するんじゃないかってくらいの衝撃が来る。

 正直内臓ぐちゃぐちゃになった気がするが、でもこれだけの一撃、【フレンドリーファイア】で直撃もらった【小夜啼鳥】だって無事ではないだろう。


 所詮は再現だ、実際に起きたことがないであろう事象への対処能力は弱いはずと精密さんが言っていたが大当たりだな。

 揃いも揃って【フレンドリーファイア】を考慮できていないから、【冒険王】はオレへの攻撃を躊躇わないし、【勇者】も気にかけない。

そして【ハイヒール】のクールタイムの15秒の間の一撃に、【小夜啼鳥】は何も出来ない。

 重なり合って倒れ込んだ状態は【フレンドリーファイア】を考慮しなければ当然隙だらけに見える。最も手札の多い【勇者】がする択としては追い打ちが一番ありえるだろう。


『【集中】、【範囲収束】、【サンダーボルト】』


 最高の一撃をありがとう。

 仲間にも当たるなんて欠片も思っていない攻撃。オレと【小夜啼鳥】、ついでに【冒険王】まで巻き込んだ一撃が完全に【小夜啼鳥】の命を刈り取った。


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