魂喰らいのレベード
ポケットにねじ込んだ3個目の身代わり人形が砕けた。
感触的に背後からの一撃だったような気がするが根本的な気配のようなものは前方から感じている。
「チッ……」
先程から居るであろう大まかな方向はわかるのだが、攻撃範囲が読めない。まるで伸びたり縮んだりしているかのように攻撃範囲が変わる。それが相手の高速移動によるものか、物理的な変化なのか判断がつけばまだ楽なのだが……。
範囲攻撃で削りきるのが理想なのだが、オレの手持ちのスキルの範囲攻撃はとにかくクールタイムが長いので今は使えない。
一撃が必要な場合【盛者の理】が使えないのは厳しいし、雑魚からの【生命簒奪】での回復ができなくなるのも厳しい。
こういう不可視の敵に一番向いているのが氷雪さんのパーティなんだよなぁ。
メンバー四人揃って相手もろくに確認せずにとにかく全体攻撃をぶっ放し続けるスタイルなので、あの人たちがここを草刈りしていれば認識すらされない内に倒されていただろう。
オレにそんな都合のいいスキルは無いので地道にやるしか無いのだが。
なんて現実逃避しながら追加で取り出した【身代わり人形】をポケットにねじこむ。
相手との距離を掴みあぐねていたら、マーダーマリオネットのパーティがリポップした。
いっそ肉盾になってくれないかと思いつつ前衛のマーダーマリオネットの手を切り落として無力化するとパーティの中心に入り込む。
そのまま後衛の頭を潰してしまおうと剣を振るおうとしたが再び背筋に走る悪寒。
両足に魔力を籠めて跳躍した直後、足元のマーダーマリオネットのパーティが同時に上半身と下半身がズレるように切断されるとそのまま傾いて限界を迎え消えた。
今の攻撃で高速移動説はほぼ無くなったな。
この
触腕系か装備品系かは不明だが、飛距離はそれなりに長そうだ。先ほど背後から食らったと感じたのは本当に背後からだったのだろう。大きくしなる程度の柔軟性を併せ持つ鋭い刃……といったところだろうか。衝撃を叩きつけられるのではなくそのまま切断されたマーダーマリオネットの切断面の美しさからもその切れ味が伺える。
これだけの攻撃範囲の長さだ、一番無防備なのはやはり攻撃している瞬間。
もう一度マーダーマリオネットが湧いたときがチャンスだろう。
来た!
オレの側にまたパーティ単位でリポップしたマーダーマリオネットの中に再び入り込む。
一度相手の攻撃を振らせて、先程の再現のように切断されるマーダーマリオネットを足元に確認しながらも空中に魔力操作で足場を作る。
相手が再度振り切る前に足場を使って距離を詰めようとした瞬間【身代わり人形】が砕けた。
「っ!?」
今何が起きた……?追い打ちが来る前に足場を使って後方に距離を取る。一箇所に留まるとまた攻撃されかねないので足は止めない。
確かに相手の攻撃は振らせた筈。マーダーマリオネットのパーティを丸ごと巻き込める斬撃は相手から横薙ぎに振るわれたとして、物理的な長さもそれなりの長さになっている筈。一度振り切った後ここまで早くもう一撃与える事は出来ないと踏んでいた。
姿が完全に見えないというのが本当に厄介だ。
大抵のモンスターはその外見から攻撃範囲が解るが、どのような形をしているのかすら分からないと今みたいに想定外の攻撃を喰らう。
これはもう、強引にでも相手の形を把握しないと勝機は無さそうだ。
残りの【身代わり人形】をまとめて取り出すとドロップアイテムのキングポイズントードの毒をありったけ取り出す。オレの他に誰も居ない階層だからもうテロ覚悟で使わせてもらう。
体内魔力を練って、
そのまま被弾覚悟で突っ込むと手持ちのキングポイズントードの毒を全部ぶち撒けた。
「くっせぇ」
「……」
臭い、汚い、気持ち悪いの3Kの毒液は見るからに毒々しい紫色をしていてかつ落ちにくい。周囲に飛び散りながらも上手く被弾した相手の輪郭を朧げながら形作る。
明確にソコに居ると認識出来たので【王眼】。
名前:魂喰らいのレベード
種族:■■■■■■■■■■■+++++
生命:A
魔力:S
力 :S++++
防御:D
速さ:S++
装備:サイレントブーツ、不在の証明、先人の刃
その形はとても歪だった。
ギョロリと動く巨大な目と伸び切った舌を持つカメレオンの身体に突然無理矢理人の下半身を生やしたような不自然なシルエット。カメレオンの胴体から生えた短い手は途中から人間の手に生え変わり剣を持っている。
その上装備欄ではモンスターの癖に人間専用装備の筈のサイレントブーツを当然のように装備している。
オレに認識されたと理解したカメレオンは、まるで人間のように嗤った。
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