第3話 新たなパラダイスへ
宇宙のどこかにある惑星アンマー。
その星では、数多の星の民が選挙で
それは千年に一度行われる星一番の目玉行事であった。
当然人々は、より星の民を愛し、より恵みを与えてくれそうな神を選ぶものである。
ところが現在の
それなのに選挙で選ばれたのは、
選挙期間のその一年だけは大豊穣、経済は好転に好転を重ね、ラッキー連発で、星の民はウハウハな状態になった。
だが、それは長くは続かない。
「いやあ、神官長のお召し物は今日もセクチィですなあ」
「そうかのぅ、今日は大胆にへそ出しルックで攻めてみたぞい……そういう副官は肩の見せ方がセクチィじゃ」
「いやいや、神官長殿副官殿、ワシの背中を見てくだされ!」
「おぉ、どれどれ……おおぉ……なんて大胆なカットじゃ……布地のドレープ具合といい、サイコーにセクチィじゃな! あっはっは!」
ガシャン!
「おい、お前ら……」
「あぁ、これは
ここは神職者が
磨き上げられた調度品の数々、壁に飾られた美しい絵画。著名な彫刻家にわがままを言って作らせた、幾つもの半裸美女のオブジェが、バランスよく置かれている。
「飲み物より、巫女だ巫女! 強制招集をかけてからもう一週間経つというのに、まだ一人もおらんとはいったいどういうことだ神官長!」
艶々と光るソファにふんぞり返り、
ちなみに神職は男女別に呼び名と採用年齢が異なっている。
男性は神官と呼ばれ、採用年齢は70歳以上。女性は巫女と呼ばれ、採用年齢は16〜40歳だ。
尚、巫女はさらに
運悪く
「えぇと、募集はしてるのですが、困ったことになかなか集まりませぬのじゃ」
「だからこそ強制にしたのだろうが! わかるか、強制とは義務だぞ! 逆らうことは許されんのだ!」
「はあ……いや、
副官はどこからか薄い冊子を取り出した。
ブルーとグリーンの癒しカラーをメインに刷られ、でかでかと『いざ!
「見せろ!」
「どのくらいだ……どのくらいの数が流出している……」
「は? 良質ですか?」
「ちがう! この星から出ていった民の数はどのくらいかと聞いているんだ!」
「はあ、えっと……」
問われた神官は使い古されたメモ帳を取り出し、指をペロリと舐めてページをめくる。
「約二分の一ですな」
「な、半分だと⁉」
「はあ、だいぶ流行っとりますなぁ……カッカッカ」
「ぐぬぬ……あいつら……」
苛立った
おそらく
「いいだろう……そうくるなら、私とて考えがある……おい、神官長! 私は
「な、なんと!」
「後任は私の息子に託す。色々世話を焼いてくれ!」
そう言うが早いか
「お前らのシワだらけの体を眺めながら飲む酒なんぞ、不味くてたまらんからな! 私は私のパラダイスを探しにゆく!」
にやりと顔を歪めたのは、
「うまくいきましたな、神官長」
「うむ。ほんとに単純で助かるワイ」
「星の民を呼び戻さねば星を爆破する、とか言われたらどうしようかとヒヤヒヤしましたゾイ」
齢70以上の3人の神官は揃ってため息を吐いた。
「
「息子様は、母上様がああならないようにと口酸っぱく指導されて育ってきましたからな……これで安心ですじゃ」
こうして惑星アンマーは、その星の民の数をほとんど減らすことなく、いらない神を星の外に追いやることに成功したのである。
そしてこの出来事は、宇宙のどこかにある別の星の民を不幸のどん底に突き落とすのであった。
クビになった主神様 鹿嶋 雲丹 @uni888
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