第8話
「あ、善サマ配信してるぅ!」
由良は早速、携帯端末を使用して配信を確認する。
相変わらずの過疎配信、コメントをする視聴者は殆どいない。
カタツムリの様なコメントスピードを加速させる様に、由良はコメントを入力していく。
・ヨツヨシ様!
・今日は何をするんですかっ!
・討伐配信っ!ヨツヨシ様の戦い大好きっ!
・もっとナイフとか使って下さい!!
指を動かしてコメントを打っていく。
その素早い打ち込みに、川の流れの様にコメントが流れていく。
「今日はどんな配信内容になるのかな…誰この女」
「何で善サマと一緒にいるの最初に討伐に来ていた配信者」
彼女は憤りを露わにしていた。
基本的に神様である彼女はヨツヨシとの動画配信は許可されていない。
単純に言ってしまえば彼女は人気配信者である。
それなりの書くというものが存在した。
だからヨツヨシとコラボをしたとしても大した数字は取れないだろうし彼女を信仰している登録者からすれば忖度をしている。
やましい思い、ヨツヨシに対する特別な感情を持っているのだと察してしまうだろう。
彼女のファンは男性が多い。
コラボをする相手はできることならば男性は避けた方がいいのだ。
だから少なくともヨツヨシが人気配信者になるまではコラボなどはできない。
しかしヨツヨシは自分が人気になろうとは思っていない。
だから現実的に行ってしまえば専属契約者として出演する事が一番手っ取り早い。
だからこうして、ヨツヨシに直接スカウトをしていた。
・だれ?この拝神者
・聞いてない聞いてない
・仲良くしないで
目を大きく開かせて、愛が募る言葉の数々をコメントとして残していく。
端から見れば荒らしとしか思えない行動。
その発信の数に、看過できずに由良に対してコメントをするコメント。
・うるさいと思います。画面が見えません
丁寧なコメントではあるが、コメントを送った主は内心怒りを抱いている。
より良い配信環境での視聴。
それが出来ないのならばそれは視聴者ではなくただの邪悪でしかない。
その考えの中、携帯端末を使い丁寧なコメントを送るのが。
「折角の、配信を、邪魔し、ないで下さい…、と」
罰の神・エンであった。
裁きの神の血筋を持つ彼女にとって、ネット上での定められたルールは徹底として守る。
当然、ルールを守らない視聴者にも同じようにコメントをするのだ。
「だって普通におかしいでしょ、私は善サマの配信を見に来たのに…、変なコメントが沸いて出てくるなんて…く、ふぅっ」
息を吐く。
冷静になる為に考えることを一時止めた。
深呼吸をした末に彼女は声を出す。
「だぅって!だって善サマが他の女と一緒に居るんだもんんっ!!嫌イヤ!善サマが他の女と一緒に居るなんて絶対にイヤ!私だけを見てほしい!信仰し続けて欲しいぃ!」
駄々を捏ねる由良。
その声は部屋を貫通していた。
配神者が存在する世界で、専属拝神者になって欲しいと狂信的になっている複数の神様系ヒロインからスカウトされるが、それを拒む主人公の話。 三流木青二斎無一門 @itisyou
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