第7話
「蘭雨さんか、宜しく、俺はヨツヨシだ、
ヨツヨシの言葉に、蘭雨は顔を縦に振って頷く。
「はい、この凶ツ神は、…私一人では、少し、荷が重く、ぜひとも、共闘を、お願いします」
基本的に横入は御法度である。
それが拝神者にとっての暗黙のルールである。
それを守るヨツヨシは、確認を取って共に戦う事にした。
「それは良かった…よッ!」
ヨツヨシはナイフを凶ツ神の方へと投げた。
ナイフが、強固な皮膚を持つ凶ツ神の前足に、尖端が当たる。
だが、突き刺さる事は無く弾かれた。
「この、凶ツ神は、とても、硬い皮膚を持ちます、打撃で通す、のが宜しい、かと」
唐傘を閉ざして蘭雨は木刀の様に唐傘を構える。
彼女の助言を聞き入れたヨツヨシは頷いたが。
「ありがとう、けど、大丈夫だ」
ヨツヨシは凶ツ神に接近、凶ツ神が首を下に向けて噛み付こうとするがそれを回避。
先程前足に傷ついた箇所に手を添えると共に、ヨツヨシは権能を行使。
すると、傷ついた箇所が罅割れ出して、掠り傷が致命傷に近い切傷と化した。
前足が切断された事で四足歩行の凶ツ神はバランスを崩して倒れる。
その転倒に巻き込まれない様に、ヨツヨシは回避する。
蘭雨の元へと戻ると、蘭雨は不思議そうな顔をしてヨツヨシの方を見ていた。
「先ほどのは…、権能、ですか?」
ただのナイフで切断したワケじゃないだろうと、蘭雨は思った。
ヨツヨシは韴の神の権能を使役し、再びナイフを出現させる。
「あぁ、動画では既に紹介してるから言うけど、さっきのは『傷の神』による権能だよ」
傷の神からの権能である切断の技。
事前に自らが対象に傷を付けなければならなず、傷に触れなければならないと言う二つの制約を満たさなければならない。
だが、この権能には奉納は必要が無い。
傷の神から依頼された『案件』によって、ヨツヨシは切断の技を奉納無しで使用する事が出来る。
「これでもう、殆ど自由が効かないな、トドメはお願いしようか」
「分かりました、では…」
蘭雨は閉ざした唐傘を持ったまま跳躍する。
そして唐傘を開くと、彼女の体重など度外視するように、ふわふわとゆっくり落下しながら、凶ツ神の頭部付近まで近づくと、再び唐傘を閉ざして彼女が凶ツ神の頭部を思い切り殴った。
重い一撃。
鈍い打撃音が響くと共に、凶ツ神は苦しそうな悲鳴を漏らした末に絶命を果たす。
すぐさま、蘭雨の鳥と、ヨツヨシの鳥が凶ツ神の死体に近づくと、二人で分け与える様に光が凶ツ神を包み込んで、報酬としてデータバンクに金額が加算された。
「お疲れ様、です」
蘭雨は、そうヨツヨシに深々と頭を下げるのだった。
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