【4-1】 ぐーたら参謀の新婚生活? 上
【第4章 登場人物】
https://kakuyomu.jp/works/16817330657005975533/episodes/16818023213408306965
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ブレギア領西端の城塞都市・アリアク。ここから、ブレギア軍は旧ヴァナヘイム領内への侵攻を繰り返していた。
【地図】ヴァナヘイム・ブレギア国境 第2部
https://kakuyomu.jp/users/FuminoriAkiyama/news/16817330668554055249
補給拠点として、兵糧・銃弾・砲弾・軍馬・馬具・飼葉・医薬品……ブレギア国中からおびただしい数の軍需物資が日夜集積され、朝晩ともなく西方の前線へ送り込まれていく。
先代遺児とその補佐官たちが実権を握るようになってから、アリアクの城下町では、天上界神と地下界神の誕生祭が、毎日続くがごとき賑わいを見せている。
城塞司令官・ダグダ=ドネガルは、その冴えない風采からは想像がつかないほど、軍政両面の実務能力に長けていた。
日常の内政統治から非日常の遠征軍後援までとなると、生まれ持った政才だけでこなせるものではない。彼は毎夜2時間まで睡眠時間を削り、懸命に職務にまい進していたのである。
遠征軍の後方支援――物資の補給といった地味な役回りは、「普通に出来て当たり前」とされ、陽の目にあたらない職務であった。だが、不可欠かつ肝要な職務でもあった。
この地味な男の献身・砕身があったからこそ、レオンたちは戦争ごっこにうつつを抜かすことが出来ていたのである。
城塞都市の外れには、帝国式の賃貸住居棟が並んでいた。
3階建ての細長い住宅が複数一体化したそれは、石造りであった。草原では見られない構造と材質である。
アリアク城では、各国からの隊商や馬商人の立ち寄りが、日を追うごとに増加している。
名宰相・キアン=ラヴァーダの国政改革が進む草原の国では、国内完結型はとうに終わり、
おまけに、昨今、帝国に敗れ支配されてからというもの、旧ヴァナヘイム領からの亡命者まで増えている。
増え続ける交易関係者や流入者を受け入れるため、ドネガルは彼等に配慮した帝国式建物を用意していた。
彼自身もその昔、帝国から亡命してきた身の上である。亡命者がいきなり、草原の民のような天幕生活を強いられるのは、自身の体験上、酷であることを知っていた。
また、城壁にぐるりと囲まれた街では、土地が限られており、集合住宅の方が、効率が良いことも知っていた。
そうした居住棟の一室では、帝国陸軍中佐・セラ=レイスが新聞を片手に、食事をつついていた。
副官・キイルタ=トラフ中尉が作ったそれは、上官のし好を理解した朝食だ。
しかし、プレートの大半を占めるは、シロップがふんだんに掛けられたポテパンに、砂糖と蜂蜜多めのベイクドビーンズだ。全体的に甘い。
朝食とも昼食ともいえぬ中途半端な時刻にもかかわらず、レイスは寝癖で波打つ紅毛を直すこともない。もっとも、トラフもこの日は朝から蒼みがかった黒髪を下ろしていた。
アリアク城塞都市の内部とはいえ、ここまで郊外に来れば軍需物資輸送や隊商往来の喧騒も薄れている。
鳩の間延びした鳴き声すら、ゆったりと流れていた。
【作者からのお願い】
この先も「航跡」は続いていきます。
レイス・トラフは新婚さんに!?と驚かれた方、🔖や⭐️評価をお願いいたします
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トラフたちの乗った船の推進力となりますので、何卒、よろしくお願い申し上げます🚢
【予 告】
次回、「ぐーたら参謀の新婚生活? 下」お楽しみに。
――今日も軍事の話になってしまった。
洗面所に1人立ったトラフは、大きな吐息をもらす。
草原の若君の戦いぶりについて、上官が鋭い分析を入れ、それに副長はフフフと相槌をを打つばかりで、日を重ねてしまっている。
――『フフフ』じゃない!
トラフは、蒼みがかった頭を振る。洗面台がもげるほど両手に力が入る。
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